セッション情報 シンポジウム 「自己免疫関連消化器疾患の診断と治療」

タイトル S-006:

潰瘍性大腸炎に対する免疫抑制剤の有用性に関する検討

演者 小木曽 富生(岐阜市民病院 消化器内科)
共同演者 杉山 昭彦(岐阜市民病院 消化器内科), 加藤 則廣(岐阜市民病院 消化器内科)
抄録 【目的】 潰瘍性大腸炎(UC)の治療薬は5-ASAが基本薬剤であるが、一方では副作用の強いステロイド剤の投与を使用せざるを得ない症例も少なくない。最近、免疫抑制剤としてのタクロリムスや生物学的製剤が保険適応となり臨床的有用性が注目されている。今回、我々は当院においてUCに対する免疫抑制剤の有用性について後ろ向きに検討を行った。【対象】2011年4月から2012年8月まで当院で治療を行ったUC患者110例を対象とした。平均発症年齢は37.3±18.8(4-77)歳で、平均罹患年数8.8±8.5(0.1-44)年、男女比は6:5であった。110例中入院治療を要した患者は28例で、6例が重症、22例が中等症であった。現在110例中93例が寛解維持療法中で、17例が寛解導入中であった。【成績】寛解導入治療として全例に5-ASAを使用。ステロイド(PSL)投与を行った患者は24例。一方、免疫抑制剤が寛解導入のために投与された症例はタクロリムス(FK-506)が5例、サイクロスポリンは1例もなかった。25例に白血球除去療法(CAP)が行われた。一方、寛解維持療法として108例に5-ASAが用いられた。また現在免疫抑制剤は16例に投与(AZA14例、6-MP1例、FK-5061例)。免疫抑制剤を使用したが効果減弱のため変更が2例、副作用にて変更が2例、副作用にて中止が2例、寛解維持にて中止が2例あった。AZAおよび6-MPによる平均寛解維持期間は10.4±11.6(1-50)か月であった。PSL依存例・抵抗例は21例であり、免疫抑制剤により11例で離脱、9例は現在減量中である。一方、FK-506症例は5例全例で寛解導入ができた。2例で経過中肝機能障害をきたしたが、血中トラフ値安定にて改善した。2例で頭痛、1例に振戦を認めた。5例中2例にて寛解導入後に再燃し、現在レミケードにて寛解導入中である。【結論】当院においてUC患者の免疫抑制剤治療につき検討した。AZA,6-MPはPSLの減量や離脱に有効であり、維持療法として免疫抑制剤は高い有用性が示唆された。またFK-506は高い寛解導入効果が得られたが、維持療法が保険診療上で継続投与が困難であり中止後に2例で再燃したが、今後、維持療法の保険適応が期待される。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 免疫抑制剤