セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 088:

腹腔鏡下胆嚢摘出術後、長期経過して合併したクリップ迷入による総胆管結石と遅発性胆汁瘻の1例

演者 野村 翔子(JA岐阜厚生連 東濃厚性病院 内科)
共同演者 長屋 寿彦(JA岐阜厚生連 東濃厚性病院 内科), 菊池 正和(JA岐阜厚生連 東濃厚性病院 内科), 吉田 正樹(JA岐阜厚生連 東濃厚性病院 内科), 藤本 正夫(JA岐阜厚生連 東濃厚性病院 内科), 山瀬 裕彦(JA岐阜厚生連 東濃厚性病院 内科)
抄録 【はじめに】現在、胆嚢結石に対する標準術式として腹腔鏡下胆嚢摘出術は広く普及しているが、胆嚢管や胆嚢動脈を切離する際には金属製クリップが用いられることが多い。近年、術後合併症としてこのクリップ迷入による総胆管結石症の報告例が散見されるようになった。一方、腹腔鏡下胆嚢摘出術後に胆汁瘻を合併することもあるが、その多くは術後早期の場合が多い。今回、われわれは腹腔鏡下胆嚢摘出術後6年を経て、胆嚢管処理に用いたクリップを核にした総胆管結石症に対して内視鏡的治療を行い、更にその1年半後に遅発性胆汁瘻に対し、外科的手術を要した1例を経験したので報告する。【症例】75歳男性、2005年5月に胆嚢結石症に対し、当院外科で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し、術後経過は良好であった。2010年12月頃から時に心窩部痛を自覚するようになった。2011年1月、当院内科受診、採血にて肝胆道系酵素上昇と腹部CTにて総胆管の軽度拡張と下部胆管に金属陰影を認めた。精査目的で入院、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)にて総胆管内にクリップ様構造を内部に有する18×10mm大の結石透亮像を認め、内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)後、バスケットカテーテルによる結石摘出術を施行した。結石はクリップを核とした泥状のビリルビン結石であった。その後症状は消失し、経過良好であった。しかし2012年7月に発熱、右側腹部痛が出現し、当院内科に再受診。採血では炎症反応高値、腹部CTでは肝門部に被包化された低吸収域を認め、胆汁瘻を疑い、緊急入院とした。絶食、抗菌薬点滴の保存的治療にて軽快、ERCPでは胆嚢管断端から被包化された遊離腔への造影剤の漏出を認め、確定診断とした。内科的治療は困難と考え、当院外科にて開腹下胆嚢管結紮術を施行した。術後経過は良好で、現在再発は認めていない。【結語】本症例は腹腔鏡下胆嚢摘出術後、迷入クリップを核として形成された総胆管結石と遅発性胆汁瘻を術後長期経過して合併した稀な症例と考える。その成因、今後の対策を含め、文献的考察を加え報告する。
索引用語 迷入クリップ, 胆汁瘻