セッション情報 一般演題

タイトル 060:

S状結腸癌に併存した虫垂粘液嚢胞腺腫の一例

演者 戸田 崇之(国家公務員共済組合連合会東海病院内科)
共同演者 丸田 真也(国家公務員共済組合連合会東海病院内科), 北村 雅一(国家公務員共済組合連合会東海病院内科), 三宅 忍幸(国家公務員共済組合連合会東海病院内科), 加藤 亨(国家公務員共済組合連合会東海病院内科), 濱宇津 吉隆(国家公務員共済組合連合会東海病院内科)
抄録 【はじめに】S状結腸癌に併存した虫垂粘液嚢胞腺腫の一例を経験したので報告する。【症例】93歳女性、既往歴は特になし。平成24年6月上旬より下腹部痛が出現し、当院外来を受診。貧血を指摘され入院となった。眼瞼結膜に貧血あり。腹部:平坦、軟。左側腹部に圧痛あり。腫瘤を触知せず。WBC 5800 /μl、RBC 377万 /μl、Hb 6.8 g/dl。腹部造影CTでS状結腸に全周性の壁肥厚を認めた。また盲腸から虫垂にかけて嚢胞性病変を認めた。腹部USでは虫垂付近に境界明瞭でφ90x29mm、ソーセージ様の嚢胞性病変を認めた。下部消化管内視鏡検査では、S状結腸に全周性の狭窄を認めたがスコープは通過した。盲腸には表面平滑で半球状の粘膜下腫瘍様隆起が存在し、虫垂開口部を隆起上の陥凹として認めた。CT colonography では虫垂は描出されず、盲腸底部に粘膜下腫瘍様の陰影欠損として描出された。第15病日に腹腔鏡下S状結腸切除術(D3郭清)、虫垂を含む盲腸部分切除術が施行された。術中所見では、虫垂は嚢胞状に腫大しており内部は黄色の粘液で充満していた。病理所見では、S状結腸は中分化型腺癌、se, ly0, v1, INFb, int, PM0, DM0, N1だった。虫垂の層構造は消失し、膠原線維豊富な結合組織に置換されていた。また、わずかに粘液中に腺腫と考えられる異型円柱上皮を認めた。以上より、S状結腸癌に併存した虫垂粘液嚢胞腺腫と診断した。術後の経過は順調で、第32病日に退院となった。【考察】虫垂粘液嚢腫は、虫垂の腔内に粘液が貯留して、虫垂が拡張した状態を言い、発生頻度は虫垂切除患者の0.08~4.1%とされている。病理学的には過形成、粘液嚢胞腺腫、粘液嚢胞腺癌の3つに分類される。本症例では、粘液産生腺腫による粘液が貯留して虫垂粘液嚢胞腺腫に進展したものと考えられた。治療は、術中の嚢胞破裂による腹膜播種を防ぐため、従来は開腹による慎重な切除が行われてきた。近年は腹腔鏡手術の安全性・確実性が向上しており、また本症例は高齢でもあり、できるだけ低侵襲を目的として、腹腔鏡補助下切除術を選択した。
索引用語 虫垂粘液嚢胞腺腫, 腹腔鏡補助下手術