セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 067:

特発性腸間膜静脈硬化症の1例

演者 浅野 剛(名古屋市立東部医療センター 消化器内科)
共同演者 田中 義人(名古屋市立東部医療センター 消化器内科), 川村 百合加(名古屋市立東部医療センター 消化器内科), 北川 美香(名古屋市立東部医療センター 消化器内科), 西牧 亜奈(名古屋市立東部医療センター 消化器内科), 伊藤 恵介(名古屋市立東部医療センター 消化器内科), 長谷川 千尋(名古屋市立東部医療センター 消化器内科), 川合 孝(名古屋市立東部医療センター 消化器内科)
抄録 【症例】75歳、女性【既往歴】副鼻腔炎、白内障【現病歴】平成23年8月X日に腹痛を主訴として、近医より当院紹介受診した。前医施行の腹部X線CTで上行結腸の壁肥厚を認めたため、9月Y日に大腸内視鏡検査を施行した。盲腸から横行結腸の肝弯曲部にかけて粘膜は浮腫状で暗青色を呈し、上行結腸に多発するびらんと潰瘍を認めた。また上行結腸に10mm大のLSTを認めた。9月Z日に注腸検査を施行した。上行結腸から横行結腸にかけて不整な狭窄像を認めた。外来で経過観察していたが、依然として腹痛が続くため、精査目的に11月A日入院となった。【入院後経過】造影CTで上行結腸から横行結腸の壁肥厚および同部血管の石灰化、腹部血管造影検査で右結腸静脈の狭小化と側副路形成を認め、外来で施行した内視鏡所見と併せて、特発性腸間膜静脈硬化症と診断した。治療方針に関しては腹痛、食欲不振が継続して患者のQOLが低下していること、またLSTがあり、内視鏡的治療を行った場合に治癒の遅延、穿孔、出血などの偶発症のリスクが高いことが予測されたため、手術が望ましいと考えた。患者および家族への充分なインフォームド・コンセントの下、外科にて同年11月腹腔鏡下右半結腸切除術を施行した。切除標本の病理所見は、ほぼ全層性に血管の増生と硝子化が存在し、一部で狭窄や石灰化、骨化を認めた。周囲には線維増生を伴い、一部の粘膜下層では強い浮腫が存在した。動脈は比較的保たれていることから、静脈への変性病変と考え、特発性腸間膜静脈硬化症として矛盾しない像であった。術後経過は順調で、12月B日退院となった。【考察】特発性腸間膜静脈硬化症はわが国で初めて報告され,その疾患概念が確立された比較的稀な原因不明の腸疾患である。生薬の山梔子を含有する漢方薬の長期服用が原因の一つであるとの報告もあり、詳細な内服歴の聴取が重要である。本疾患はCTや内視鏡検査で特異的な所見を有するため、疾患の認知さえあれば診断は比較的容易と考えられる。腹痛の鑑別疾患として念頭に置き診療にあたるべきである。
索引用語 特発性腸間膜静脈硬化症, 山梔子