セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 020:

消化管出血をきたした腎細胞癌多発胃転移の一例

演者 長谷川 恒輔(岐阜県総合医療センター 消化器内科)
共同演者 中村 みき(岐阜県総合医療センター 消化器内科), 丸田 明範(岐阜県総合医療センター 消化器内科), 若山 孝英(岐阜県総合医療センター 消化器内科), 山内  貴裕(岐阜県総合医療センター 消化器内科), 安藤 暢洋(岐阜県総合医療センター 消化器内科), 大島 靖広(岐阜県総合医療センター 消化器内科), 岩田 圭介(岐阜県総合医療センター 消化器内科), 芋瀬 基明(岐阜県総合医療センター 消化器内科), 清水 省吾(岐阜県総合医療センター 消化器内科), 杉原 潤一(岐阜県総合医療センター 消化器内科), 天野 和雄(岐阜県総合医療センター 消化器内科), 岩田 仁(岐阜県総合医療センター 病理診断科)
抄録 【症例】70代 女性【既往歴】B型慢性肝炎、子宮筋腫【現病歴・臨床経過】2009年10月に血尿を自覚し、近医を受診。腹部CTにて右腎腫瘤を指摘され当院泌尿器科へ紹介となった。泌尿器科の精査にて右腎細胞癌・肺転移と診断された。原発巣に対して手術を施行された後にインターフェロンや分子標的治療薬にて治療されていたが、2011年4月には脳転移と肝転移を、2011年7月には膵転移が出現した。その後、2011年9月に黒色便を認めたため消化管出血疑いにて当科紹介となった。上部消化管内視鏡検査を施行したところ、胃体中部大彎の前璧側と後壁側にそれぞれ過形成性ポリープ様の発赤を伴う山田3型ポリープを認め、ポリープの起始部にDieulafoy潰瘍を認めた。潰瘍より湧出性出血を認めたため、内視鏡的止血術を施行した。検査翌日に再度内視鏡にて胃内を確認すると、止血処置をした潰瘍部からの出血はみられなかったが、前後壁のポリープ表面からそれぞれ持続性の出血を認めたため、両病変に対して内視鏡的粘膜切除術を施行した。切除標本の病理組織学的検索結果はadenocarcinomaであり、2009年に手術を施行された腎細胞癌と同様の形態を呈していた。また、切除した病変以外の部位からも生検にて同様の結果が得られており、腎細胞癌の多発胃転移と考えられた。ポリープ切除後は消化管出血再発は認めなかった。【考察】転移性胃癌は頻度が低く剖検時に発見されることが多い。その原発巣としては肺や膵が多いと報告されており、腎細胞癌は転移性胃癌全体の0.6%といわれている。腎細胞癌は摘出後長期間を経て多臓器に転移することが知られているが、転移臓器は一般に肺・肝・骨・脳に多く、胃への転移は0.2%~0.7%と非常に稀である。また、その肉眼形態は様々ではあるものの粘膜下腫瘍や潰瘍の形態を呈することが多く、症状としては出血や貧血、幽門狭窄、穿孔などの報告があるが多くは無症状である。【結語】今回、非常に稀な多発性で有茎性を呈し内視鏡的なコントロールが必要な出血をきたした腎細胞癌の多発胃転移症例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告した。
索引用語 腎細胞癌胃転移, 消化管出血