セッション情報 一般演題

タイトル 013:

両側耳下腺腫脹疼痛を契機に膵外分泌機能低下と考えられる脂肪性軟便が1年間持続した習慣性飲酒の1例

演者 廣藤 秀雄(かすみがうら クリニック)
共同演者
抄録 【症例】56歳、男性〈主訴〉脂の浮く軟便(2-3行/日)〈既往歴〉飲酒2合、喫煙5本/日〈現病歴〉H23年5/7から両側耳下腺の疼痛腫脹が出現したため、5/14耳鼻咽喉科医院を受診。流行性耳下腺炎が疑われた。[ムンプスの既往癧なし、体温37.4度、血清アミラーゼ 226 U/L, 抗ムンプス抗体(HI)<8倍、CRP 1.81 mg/dL]6行/日の軟便も耳下腺の腫脹・口渇・食欲不振が改善してから2-3行/日となり自然に治ると思って1年間経過をみていた。平成24年5/28、脂の浮く軟便が改善しないため当院を受診された。〈理学所見〉身長 172cm, 体重 51kg(最高 55kg), 血圧 134/70, 貧血・黄疸なし, 表在リンパ節触知せず, 胸部所見なし, 腹部:圧痛なく軟, 肝を触知せず, 下肢浮腫なし 〈臨床検査成績〉血清リパーゼ 5 U/L, アミラーゼ 102 U/L, CRP < 0.05 mg/dL, 総蛋白 7.3 g/dL, ALT 113 U/L, g-GT 28 U/L〈臨床経過〉2週間の断酒と整腸剤・消化酵製剤により、少しずつ便通が改善して10日間は調子もよく、脂も出なかった。そのあと心窩部が痛めたため、6/11 桂枝加芍薬湯 2.5g を眠前に追加した。6/25 まだ少し便と脂が流れ出ると訴えあり。冬場に乾燥肌、寒さが苦手な体質と、腹診にてオ血圧痛(微小循環障害)を認めたことから四物湯 3錠(Ku社)・朝食前に変方した。その後、脂臭い便臭が改善して本来の匂いに戻った。腹部に違和感はないが、腸が鳴ると訴えた。便通は3行/日。さらに症状が好転することを期待して、整腸剤に加えてパンクレリパーゼを開始した。東洋薬は桂枝加芍薬湯に戻し 5g 分2とした。8/6 腹部USを施行。膵臓に所見なく、胆嚢結石を認めた。便通は1-2行/日に改善し、9/3 体重が 53kg まで増加した。【考察】成人発症の流行性耳下腺炎は小児と異なり治癒が遅れ、また膵炎の合併は4%以下という。本例は他のウイルス感染も否定できない。上腹部痛の訴えはなく3週間の経過で耳下腺炎は治癒したが、脂肪性軟便が1年間持続して体重減少を来した。膵外分泌機能の低下と考えられ、パンクレリパーゼ1800 mg/日の補充が有用であった。
索引用語 耳下腺炎, 膵外分泌機能不全