セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 076:

関節炎症状が先行したエルシニア腸炎の1例

演者 杉江 岳彦(岐阜赤十字病院 消化器内科)
共同演者 高橋 裕司(岐阜赤十字病院 消化器内科), 宮崎 恒起(岐阜赤十字病院 消化器内科), 松下 知路(岐阜赤十字病院 消化器内科), 伊藤 陽一郎(岐阜赤十字病院 消化器内科), 名倉 一夫(岐阜赤十字病院 消化器内科), 後藤 裕夫(岐阜赤十字病院 放射線科)
抄録 【はじめに】エルシニア腸炎はYersinia属による腸管感染症で、原因菌はY.enterocolitica,Y.psuedotuberculosisが知られている。Y.enterocoliticaは腹痛、特に右下腹部痛が多く虫垂炎、終末回腸炎、腸間膜リンパ節炎と診断されることが多い。しかしエルシニア腸炎は培養検査では陰性例も多く、必ずしも正診が得られているとは限らない。今回関節炎症状が先行したエルシニア腸炎の1例を経験したので報告する。【症例】20歳代 男性【既往歴/家族歴】特記すべきことなし【現病歴】2012年6月3日に関節炎、発熱を認め近医を受診、感冒の診断にて抗生剤等の投与を受けた。その後も症状の変化なく、右下腹部痛も出現したために6月11日に当院を受診し精査加療目的に入院となった。明らかな感染ルートは不明。【入院時現症】身長168.5cm,体重66.4kg ,体温38.8度,血圧122/64,脈78/分 整。胸部に異常所見を認めず。右下腹部に圧痛を認めるが腹膜刺激症状は認めず。表在リンパ節触知せず。【血液生化学検査】WBC 12700/ul,CRP 6.89mg/dl,T.P 6.5g/dl,ALB 3.9g/dlと異常値を認めた。【画像所見】腹部超音波検査で回腸末端部の壁肥厚と周囲リンパ節腫脹、少量の腹水を認めた。腹部CTも同様所見であった。【大腸内視鏡検査所見】入院後5日目に大腸内視鏡検査を施行。回盲弁は腫脹し終末回腸はパイエル板の肥厚と小白苔を認めた。【入院後経過】抗生剤投与を開始、解熱とともに右下腹部痛は消失。便培養検査ではKlebsiella属を認めるのみであったが、血清抗体でY.enterocolitica抗体が160倍でエルシニア腸炎と確定診断した。入院7日目に退院となった。【考察】エルシニア腸炎は臨床症状が多彩で胃腸炎型、回盲部炎症型、結節紅斑型、関節炎型、敗血症型と分類される。本例は関節炎症状が先行し回盲部炎症型へと移行した症例と思われた。エルシニア腸炎は画像診断、抗体検査等の総合的判断と同時に慎重な臨床経過の把握が重要と思われた。
索引用語 エルシニア腸炎, 回盲部炎症型