セッション情報 シンポジウム 「自己免疫関連消化器疾患の診断と治療」

タイトル S-009:

当院におけるtype I自己免疫性膵炎の臨床的特徴と長期予後の検討

演者 樋口 俊哉(豊橋市民病院 消化器内科)
共同演者 松原 浩(豊橋市民病院 消化器内科), 浦野 文博(豊橋市民病院 消化器内科), 内藤 岳人(豊橋市民病院 消化器内科), 藤田 基和(豊橋市民病院 消化器内科), 山田 雅弘(豊橋市民病院 消化器内科), 北畠 秀介(豊橋市民病院 消化器内科), 山本 英子(豊橋市民病院 消化器内科), 田中 浩敬(豊橋市民病院 消化器内科), 田中 卓(豊橋市民病院 消化器内科), 廣瀬 崇(豊橋市民病院 消化器内科), 芳川 昌功(豊橋市民病院 消化器内科)
抄録 【背景と目的】自己免疫性膵炎(AIP)は、悪性疾患の合併もなく予後良好とされている。ステロイド(PSL)治療により、多くは比較的速やかに初発症状は軽快する。しかし、その長期経過や経過不良因子については不明な点も多く、PSL治療の導入、維持療法についても明確なコンセンサスはない。今回の目的は、当院におけるAIPの臨床的特徴と長期予後について検討し、経過不良因子を明確にすること。【方法】2003年2月から2012年9月まで、当科で経験したAIPについて、発症契機、嗜好歴、随伴症状、血液検査所見、画像検査所見、治療経過、予後について検討し、さらに経過不良因子について調査した。【結果】日本膵臓学会AIP診断基準を満たしたtype I AIP 17例を対象とした。性別:男性13例、女性4例。平均年齢:65.4±8.8(53~80歳)。診断契機(重複を含む):黄疸7例、膵腫瘍8例、腹痛4例、耐糖能コントロール不良2例。嗜好歴(重複を含む):飲酒(診断後も50g/日以上の飲酒を継続したもの)6例、喫煙者6例。既往歴:糖尿病10例。発症時血清AMY:97.9±70.7(7~313U/L)。診断時血清IgG4:335.7±301.4(65~1040mg/dL)。膵病変の主座:頭部6例、体部2例、尾部2例、全体びまん型7例。膵の病変範囲(skip 症例を含む):1区域8例、2区域2例、3区域7例。随伴症状は、膵による圧排性胆管狭窄が3例、硬化性胆管炎(SC)3例、腎疾患1例、硬化性唾液腺炎4例、後腹膜線維症を3例に認めた。PSL治療は15例に対して行い、全例30mgで開始し、その後漸減していた。経過中に再燃したものを6例認めた。また、画像上膵に萎縮を認めたものは4例、膵石発生を1例に認めた。17例全例で悪性疾患の合併を認めず、死亡例はない。再燃したもの、画像上膵萎縮、膵石を認めたものを経過不良例とすると、性、飲酒、SC、腎疾患が有意な危険因子であった(p<0.05)。4群で多変量解析を行うと、飲酒、腎疾患で相関を認め、最も強い危険因子は飲酒であった。【結論】嗜好歴として飲酒、随伴症状として腎疾患がAIP経過不良の危険因子である。AIP 診療において、禁酒指導が重要と考えられた。
索引用語 自己免疫性膵炎, 予後