セッション情報 パネルディスカッション18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

小腸疾患に対する診断治療の現況と今後の展望

タイトル 消PD18-18:

小腸濾胞性リンパ腫の治療と予後

演者 中村 昌太郎(九州大大学院・病態機能内科学)
共同演者 梁井 俊一(九州大大学院・病態機能内科学), 松本 主之(九州大大学院・病態機能内科学)
抄録 【背景】近年,内視鏡技術の進歩により小腸濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma, FL)の報告例が増加しているが,その治療方針は確立されていない。【方法】当科で診断した消化管FLのうち、ダブルバルーン内視鏡で小腸病変を確認した33例から腸管切除例を除外した29例 (男13例、女16例;平均年齢58.2歳)を対象とした。全例でt(14;18)/IgH-BCL2転座をfluorescence in situ hybridization (FISH)で検索し,臨床病理学的特徴を検討した。さらに,progression-free survival (PFS)に関連する因子をKaplan-Meier法で解析した。【結果】罹患部位は胃2例,十二指腸24例,空腸21例,回腸15例,大腸5例であり,21例 (72%)で2か所以上の消化管領域に病変を認めた。肉眼型はMLP型が最も多く (26例),臨床病期はI期16例,II2期3例,IIE期2例,IV期8例であった。組織は23例がgrade 1で,t(14;18)は27例 (93%)で陽性を示した。初回治療として,抗菌薬を含むwatch and wait (8例),リツキシマブ単剤 (R単剤群13例),またはR-CHOP療法 (6例)を行った。その結果,6例 (55%)で完全寛解 (CR),9例 (31%)で部分寛解が得られ,4例は不変であった。観察期間 (0.5~7.6年,平均3.3年)中に6例で再燃または進行を認めた。死亡例はなかった。3年後および5年後のPFS率は各々90%および60%であった。予後因子として消化管の複数領域に及ぶ病変の存在はPFS不良となる傾向がみられた (p=0.056)。R単剤群とR-CHOP群を比べると,後者でIV期例が多く,全例CR得られるものの再燃も多かった。R-CHOP群の3年後PFS率は86%であり,R単剤群 (83%)と変わらなかった。【結論】消化管濾胞性リンパ腫は十二指腸・空腸に高頻度に病変を認め,小腸内視鏡による評価が必須である。病期進行例にはR-CHOPが有効であり,早期例にはリツキシマブ単剤療法が妥当と考えられる。特に消化管の複数領域に病変が存在する例では注意深い経過観察が必要と思われる。
索引用語 濾胞性リンパ腫, 小腸内視鏡