抄録 |
食道癌に対する化学放射線療法(CRT)は、その有用性が明らかとなり標準的治療となっている。また、50Gy以上照射されたCRT後の癌遺残・再発症例に対しては、救済的な治療としてサルベージ手術が定義されている。今回、われわれは2例のサルベージ手術を施行し、良好な経過をたどったため報告する。【症例1】60歳代、女性。2008年8月嚥下困難を認め、食道癌Mt,7cm,2型,扁平上皮癌,cT4N3M0StageIVaと診断し、化学放射線療法を施行(FP5コース、RT60Gy)。CRと判定していたが、3年6ヶ月後のCTにて噴門リンパ節の腫大を認めた。EUS-FNAを施行し、扁平上皮癌を認め噴門リンパ節転移と診断した。開腹下部食道胃全摘、肝横隔膜合併切除術を施行し、R0手術となった。経過は良好で、術後19日目に退院となった。術後5ヶ月、再発・転移を認めず経過観察中である。【症例2】70歳代、男性。2010年11月、食道癌MtLt,7cm,0-IIc+IIa型,扁平上皮癌,cT1bN4M0,cStageIVaと診断し、化学放射線療法を施行(CDDP+5FU1コース、Nedaplatin+5FU3コース、Paclitaxel8コース、RT50Gy)。1年3ヶ月後、噴門リンパ節の増大を認めPDと判定し、外科的切除を検討したが本人が同意せず、経過観察となった。その後貧血が進行し、EGDにて噴門リンパ節の胃内穿破と診断。出血コントロール目的に、開腹下部食道胃全摘、肝横隔膜合併切除術を施行した。術後10日目に虫垂炎をきたし、虫垂切除術を施行したところ、虫垂体部に転移性腫瘍を認めた。術後3ヶ月、再発・転移を認めず経過観察中である。【まとめ】食道癌に対するCRTは標準的治療であり、治療後の癌遺残・再発症例に対するサルベージ手術も準標準的な治療であり、唯一の救済治療として期待されている。今回の2例はその可能性を認めた。 |