セッション情報 一般演題

タイトル 037:

ミリプラチンを用いた肝動脈化学塞栓療法により門脈腫瘍栓Vp3が縮小した肝細胞癌の1例

演者 栗田 聡(新潟県立がんセンター 新潟病院 内科)
共同演者 青柳 智也(新潟県立がんセンター 新潟病院 内科), 佐々木 俊哉(新潟県立がんセンター 新潟病院 内科), 船越 和博(新潟県立がんセンター 新潟病院 内科), 本山 展隆(新潟県立がんセンター 新潟病院 内科), 加藤 俊幸(新潟県立がんセンター 新潟病院 内科), 関  裕史(新潟県立がんセンター 新潟病院 放射線科)
抄録 【はじめに】肝細胞癌は経門脈的に転移し、門脈腫瘍塞栓も高率に合併することが知られている。また、門脈内腫瘍栓(Vp3-4)は肝細胞癌の予後不良因子の一つである。ミリプラチンは第三世代のオキサリプラチン同様に、シスプラチン耐性獲得株にも感受性を備えたDiaminocyclohexane(DACH)構造をもち、かつ肝細胞癌の動注療法に適した脂溶性プラチナ製剤として創薬された。今回Vp3門脈腫瘍塞栓を伴った肝細胞癌症例に対し、ミリプラチンを用いた肝動脈化学塞栓療法が奏功した1例を経験したので報告する。
【症例】60歳代男性。C型慢性肝炎にて経過観察中、2008年に肝細胞癌を発症。同年外科的切除術を受けた。術後Peg-IFNα-2a+リバビリン療法を48週受けるもウイルス再燃。2010年10月(術後2.5年)AFP 、PIVKAII の増加とともに、肝左葉S2に門脈左枝腫瘍塞栓を伴う肝細胞癌の再発を認めた。同病変に対しミリプラチン120mg+ジェルパートによる肝動脈化学塞栓療法を施行。2.5ヶ月後に2回目の腹部血管造影を施行した際、肝S2の主腫瘍は濃染を認めず、また腫瘍栓は縮小し門脈左枝は再開通の所見を呈した。その後も主腫瘍に遺残再発なく腫瘍マーカーも低値を維持している。新規病変に対し5ヶ月後に3回目の肝動脈化学塞栓療法を、14ヶ月後に定位放射線療法44Gyを追加しているが、門脈腫瘍塞栓の再発なく現在生存中である。
【結語】血管造影時に門脈腫瘍塞栓の供血に相当する動脈を同定でき、同部へ化学塞栓療法が可能であったことが良好な結果につながったと考えられる。現時点ではミリプラチンと多孔性ゼラチン粒を用いた塞栓術の併用が認可されていないが、本症例のように肝動脈塞栓を併用することで、さらに抗腫瘍効果が高まることが期待される。
索引用語 肝細胞がん, ミリプラチン