セッション情報 一般演題

タイトル 059:

術中内視鏡で切除範囲を決定した成人腸重積症の一例

演者 山本 香織(社会医療法人抱性会 丸の内病院 消化器内科)
共同演者 中村 直(社会医療法人抱性会 丸の内病院 消化器内科), 五十嵐 淳(社会医療法人抱性会 丸の内病院 外科)
抄録 症例は83歳の女性で、2012年8月上旬より腹部不快感、食欲不振があり、近医にて対処療法を施されていたが改善しないため8月17日に当院へ紹介入院となった。経過中、体重減少、腹痛、嘔吐、血便などはなかった。既往に高血圧症、骨粗鬆症、子宮筋腫、子宮脱があり、子宮脱に対してはペッサリーを挿入していた。入院時の現症では、貧血や黄疸はなく、胸部にも異常所見は認めなかった。腹部は平坦で腸雑音は正常、腫瘤は触知しなかった。血液検査では軽度の低アルブミン血症を認めたが、白血球増多や炎症反応は認められなかった。入院後の経口摂取量は60%前後のため補液を行っていたが、腹痛、嘔吐、血便などはなかった。その後行った腹部超音波検査にてtarget signが認められ、腹部造影CT検査にて層状構造をもつ腫瘤影を認め、回盲部の腸重積と診断した。重積腸管の先進部と考えられる腫瘤性病変は確認できなかった。腹部を丁寧に触診すると臍周辺に腫瘤を触知し、注腸造影検査を行うと横行結腸にいわゆる“カニ爪状”所見を認め、腫瘤と一致していた。しかし、日によっては腫瘤がはっきりしなくなることもあり、自覚症状が乏しいこともあり重積が解除されている可能性も考慮し、経口小腸追跡検査を行ったが回腸は16センチに及ぶ狭小化した腸管を認め、カニ爪状の横行結腸に連続しており、圧迫を繰り返しても重積部分が解除されることはなかった。重積が自然解除される可能性が低いと判断し、発症より約40日後に開腹術を施行した。回盲部の固定は不良で、上行結腸は容易に挙上可能であった。Hutchingson手技で重積を解除したところ、反転した盲腸が先進部となっていた。腸重積の原因の確認と重積腸管の血流の確認のため経肛門的に術中内視鏡検査を行ったところ盲腸に0-Is型の腫瘍を認め、また上行結腸の粘膜も一部菲薄化しており右半結腸切除術を施行した。本症例は腹痛や嘔吐などの腸重積の典型的症状を欠き、比較的まれと考え報告する。
索引用語 成人腸重積症, 術中内視鏡