セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 054:

結核性腹膜炎を合併した腸結核の1例

演者 仲村 太一(北信総合病院 消化器内科)
共同演者 佐藤 淳一(北信総合病院 消化器内科), 山本 力(北信総合病院 消化器内科), 田尻 和男(北信総合病院 消化器内科)
抄録  症例は40歳代女性。フィリピン人。2010年大動脈炎症候群に対しBentall手術施行後,当院血管外科通院していた。2012年4月フィリピンにて腹痛,下痢,悪心,発熱あり,近医受診。腹部エコーで腹水を指摘された。4月11日血管外科定期受診時,腹部膨満とCRP5.1と異常値を認めた。腹部造影CTでは,著明な腹水と,脂肪,石灰化を伴う両側卵巣腫瘤,ダグラス窩腹膜の不整を認めた。腹水細胞診はclass IIであったが血液検査の腫瘍マーカー(CA19-9:42.5U/ml,CA125:94U/ml)も高値を認めており,奇形腫,腹膜播種が疑われた。6月18日試験開腹手術施行。淡黄色腹水多量,腸管,腹膜の表面はφ数mm程度の小結節が多数あり,病理組織診断は結核性卵管炎,腹膜炎,成熟嚢胞奇形腫であった。ツベルクリン反応は陰性であった。肺結核症を疑い,喀痰と胃液で塗抹検査,抗酸菌培養,PCR提出したがすべて陰性であり,胸部レントゲン,胸部CTを施行したが明らかな病変は認められなかった。クォンティフェロンは陽性であった。腸結核を疑い下部消化管内視鏡検査を施行,横行結腸に長軸直角方向に引きつれを伴う1/3周性の輪状潰瘍を認めた。病理組織診断にて乾酪性類上皮肉芽腫が証明され,また腸組織抗酸菌培養は陽性であった。腸結核および結核性腹膜炎と診断し4剤併用の結核化学療法(INH,RFP,PZA,EB)を開始した。今回我々は病理組織診断による結核性腹膜炎,卵管炎の診断を契機に腸結核の診断に至った1例を経験した。原発性腸結核は特徴的な症状に乏しいが,下部消化管内視鏡所見は最も特徴的で有用であり,炎症性腸疾患,悪性腫瘍との鑑別が重要である。
索引用語 腸結核, 結核性腹膜炎