セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 002:

カプセル内視鏡を胃内に固定留置しGAVEからの出血をとらえた1例

演者 渡邉 ゆか理(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 消化器内科学分野)
共同演者 中村 隆人(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 消化器内科学分野), 兼藤 努(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 消化器内科学分野), 青柳 豊(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 消化器内科学分野), 橋本 哲(新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部), 横山 純二(新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部), 小林 正明(新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部), 成澤 林太郎(新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部)
抄録 症例は50歳代男性。慢性腎不全に対し透析導入後、黒色便を繰り返すため、当科を紹介受診され、EGDにてGAVEと診断された。アルゴンプラズマ凝固法(APC)を施行されたが、再発を繰り返し、月平均6単位の輸血を要した。2007年および2009年にGAVEに対し、前庭部計3カ所をESDで粘膜切除施行した。その後出血なく経過良好であったが、約1年後に再び黒色便が出現し、貧血はHb7g/dl台を推移していた。GAVE以外からの出血の可能性も考えられたため、再度当科にて精査を行った。EGDでは残存GAVEの増悪はなく、観察時に活動性の出血所見は認められなかった。TCSでは大腸に異常所見なく、カプセル内視鏡(VCE)でもGAVEを認めたが、胃、小腸では出血所見は得られなかった。月平均4単位の輸血と鉄剤内服で対応していたが、2012年8月7日貧血精査加療目的で当科入院となった。入院時身長158cm、体重48kg、脈拍55回/分、血圧154/55mmHg、胸腹部に異常所見を認めなかった。検査所見ではHb 7.9g/dlと著明な貧血を認めた。GAVEからの活動性の出血を明らかにするため、本人とご家族に十分にICを行い、入院翌日にVCEを胃内に留置固定した。VCEはオリンパス社のEC type1を使用し、固定方法は3-0絹糸でVCEを縛り、2チャンネルスコープ(GIF-2T240)を用いてVCEを胃内に誘導し、クリップで2本の糸を前庭部大弯に4点固定した。固定数十分後よりGAVEからのoozingを認め、食事摂取時から摂取後も出血、自然止血を繰り返していた。VCEは約2時間、胃、十二指腸間を移動していたが、その後十二指腸球部から下行脚に停留していた。留置2日後にEGDを施行し、十二指腸球部内に停留していたVCEを回収し、GAVEに対してAPC(出力60w 流量2l/分)を施行した。その後再出血なく、現在も経過良好である。一般にGAVEからの活動性の出血をとらえられることは少ないが、今回の観察により生理的な環境下では、少量のoozingと自然止血が繰り返されることが示唆され、貴重な症例と考えられたため報告する。
索引用語 カプセル内視鏡, GAVE