セッション情報 一般演題(初期研修医)

タイトル 57:

抗TNF-α製剤開始後に肺結核を発症した潰瘍性大腸炎の1例

演者 友藤 克博(市立宇和島病院 内科)
共同演者 宮本 安尚(市立宇和島病院 内科), 西村 亮祐(市立宇和島病院 内科), 永岡 智之(市立宇和島病院 内科), 上野 義智(市立宇和島病院 内科), 竹下 英次(市立宇和島病院 内科), 清家 裕貴(市立宇和島病院 内科), 岡本 傳男(市立宇和島病院 内科), 市川 幹郎(市立宇和島病院 内科)
抄録 症例は60歳男性。粘血便で近医を受診し潰瘍性大腸炎・全大腸炎型と診断された。5-ASA製剤で症状改善せず当院を紹介となる。当初入院の同意が得られず外来でステロイドを開始し徐々に減量していたが、血便が悪化したため入院となった。入院時の臨床的重症度は重症だった。ステロイドの静注(80mg/日)に切り替え下血は改善するが60mgの経口に減量したところで再度下血した。活動期内視鏡重症度分類は強度だった。ステロイド依存例と考えると本来の使用基準ではなかったが、寛解導入目的でインフリキシマブ(以下IFX)の投与を開始した。投与前に行った胸部CTで肺野に異常なく、ツベルクリン反応(以下ツ反)陰性、クオンティフェロン陰性だった。結核の家族歴はなかった。IFXの投与後、下血は消失しステロイドも減量可能となった。初回投与から6週後に微熱・倦怠感を訴え、胸部X線で右下肺に浸潤影を認め肺炎と診断し抗菌剤開始。同日予定していた第3回目のIFX投与は延期した。肺炎の改善を確認し予定より3週遅れで第3回目を投与した。IFX初回投与から3ヵ月後に38℃の発熱、体動時の息切れを主訴に受診。胸部CTで両肺野に微細な粒状影の散布が見られ、喀痰の結核菌PCRが陽性だった。専門病院に入院し結核の治療を開始した。抗TNF-α製剤は細胞性免疫反応を低下させるため潜在性結核菌感染症への投与は禁忌とされている。投与前にツ反や胸部X線などでチェックする必要がある。しかし、本症例ではステロイドを投与されていたことにより、ツ反やクオンティフェロンが偽陰性になったと考えられる。ステロイドや免疫抑制剤投与中の患者は、上記試験が偽陰性になりうることに留意し、経過中に発熱や呼吸症状などがあれば結核の可能性を念頭に置き迅速な対応が必要と考えた。
索引用語 抗TNF-α, 肺結核