セッション情報 一般演題

タイトル 62:

診断に苦慮した腹膜原発悪性中皮腫の1例

演者 森 俊文(麻植)
共同演者 武原 正典(麻植), 松本 早代(麻植), 井本 佳孝(麻植), 四宮 寛彦(麻植), 和田 哲(麻植)
抄録 悪性中皮腫は中皮細胞から発生する稀な悪性腫瘍であり、アスベストへの暴露が考えられている。そのうち、胸膜原発が80~90%を占め、腹膜原発は10~20%とされている。今回われわれは、腹部膨満感、食欲低下を主訴に来院し、複数回の腹水細胞診では診断がつかず、剖検をすることで診断し得た腹膜原発悪性中皮腫の1例を経験したので、文献的考察を加え報告する。症例は62歳の男性。平成23年7月初めより腹部膨満感、食欲低下が出現。改善傾向を認めず8月上旬に近医を受診し、腹部超音波検査にて大量の腹水貯留を認めたため、8月中旬当科紹介となり、精査および加療目的で同日入院した。上部、下部消化管内視鏡検査、および小腸透視検査では明らかな異常所見は認めず、腹部超音波検査、CT検査等で腹水貯留と腹腔内に内部不均一で大小不同な多発性腫瘍を認めた。腹水所見も含めて腹膜原発悪性中皮腫を疑い、頻回に腹水細胞診を行うも診断がつかず、確定診断には腹腔鏡下腹膜生検を要すると考えたが、この時既に全身状態は非常に低下しており断念。第8病日夜に死亡の転機となった。その後、御家族より剖検の同意が得られたため、同日施行。腹腔内に多結節性腫瘍と血性腹水を認めた。腫瘍は腹膜に沿って拡がり、臓器浸潤は認めず、また胸膜および心膜には病変を認めなかった。免疫組織染色にて腫瘍細胞は中皮細胞マーカー陽性、腺癌マーカー陰性であり、腹膜原発悪性中皮腫の確定診断に至った。腹水を伴い原発部位が不明な悪性疾患が疑われる場合、悪性中皮腫も念頭に置き、補助診断としてヒアルロン酸を測定することも検討すべきであると考えた。その上で、全身状態が安定していれば確定診断のため早期に開腹手術を行い、早急に集学的治療を開始することが必要であると考えた。
索引用語 悪性中皮腫, 腫瘍