セッション情報 一般演題(後期研修医)

タイトル 60:

内視鏡的止血術を施行した消化管出血症例の検討

演者 阿部 洋文(松山赤十字病院 胃腸センター)
共同演者 永田 豊(松山赤十字病院 胃腸センター), 蔵原 晃一(松山赤十字病院 胃腸センター), 尾石 義謙(松山赤十字病院 胃腸センター), 河内 修司(松山赤十字病院 胃腸センター), 川崎 啓祐(松山赤十字病院 胃腸センター), 岡本 康治(松山赤十字病院 胃腸センター), 徳本 真矢(松山赤十字病院 胃腸センター)
抄録 【目的】当センターにおける消化管出血症例の現状を明らかにすること。【対象と方法】最近5年間に当センターで全消化管において内視鏡的止血術を施行した474症例を対象とし、その臨床像を遡及的に検討した。なお、食道静脈瘤などの静脈瘤性出血症例と内視鏡的切除術後出血などの医原性出血症例は除外した。【結果】474例の内訳は、上部消化管出血409例(86%)、小腸出血8例(2%)、大腸出血57例(12%)であった。平均年齢は69.6歳で男性が324例(68%)、女性が150例(32%)であった。474症例の使用薬剤を検討すると、低用量アスピリン(以下:LDA)が93例 (19.6%)、LDA以外の抗血小板薬59例(12.5%)、抗凝固薬59例(12.4%)であり、抗血小板薬は計175例(36.3%)で使用されていた。非アスピリンNSAIDsは148例(31.2%)で使用されていた。出血の原因疾患は上部消化管では胃・十二指腸潰瘍317/409例(78%)であり、H.pylori感染率は54%、LDAを含むNSAIDs使用率は52%であった。その他、Mallory-Weiss症候群27/409例(7%)、吻合部潰瘍15/409例(4%)、腫瘍からの出血15/409例(4%)、GAVE/DAVE8/409例(2%)、逆流性食道炎4/409例(1%)などであった。小腸出血では血管異形成4/8例(50%)、NSAID潰瘍3/8例(38%)であり、大腸出血で大腸憩室出血23/57例(40%)、急性出血性直腸潰瘍症14/57例(25%)、血管異形成10/57例(18%)であった。観察期間の5年間の前半と後半で比較したが、上部消化管出血222例/187例、小腸出血2例/6例、大腸出血22例/35例と上部消化管出血が減少し小腸・大腸出血が増加する傾向であり、常用薬剤使用率(LDAを含むNSAIDs 50%/46%、LDA以外の抗血栓薬27%/25%)に有意差を認めなかった。【結論】近年、小腸出血症例に対してもバルーン小腸内視鏡によるアプローチが可能となっているが、本検討のデータでは全消化管出血例の86%が上部消化管出血で、特に胃・十二指腸潰瘍が全体の78%を占める結果であり、消化管出血対策を考えた場合、依然、胃・十二指腸潰瘍予防を最優先する必要性があると考えた。LDAを含む抗血栓薬ないし非アスピリンNSAID使用者に対する消化管出血対策もまた今後の課題と考えた。
索引用語 消化管出血, 抗血栓薬