抄録 |
【症例】58歳、男性【主訴】全身倦怠、食欲不振、残便感【既往歴】特記すべきことなし【家族歴】母親が膵臓癌【現病歴】平成23年に慢性前立腺炎で当院泌尿器科受診通院し、その後全身倦怠、食欲不振が発症したため、精査希望して平成24年1月に内科紹介となった。下部内視鏡検査と腹部造影CT検査を行なった。下部内視鏡検査では、下行結腸からS状結腸にかけて全周性発赤がみられ、S状結腸に腫大した不整粘膜の隆起が見られたが、大腸狭窄は認めなかった。CT検査では膵体尾部に不正な低吸収腫瘤を認め、周囲リンパ節腫大、腹膜の不整肥厚性変化がみられ癌性腹膜炎が疑われた。大腸生検の病理組織検査では腺癌が認められ、腫瘍マーカーはCEA:16.9ng/ml(<5)、CA19-9:53000U/ml(<37) と上昇していた。患者家族が国立がん研究センター中央病院に2nd opinionを希望したため紹介し、その後当院で抗癌剤治療を行なっている。【考察】膵臓癌の遠隔転移は肝、肺、副腎、骨などに好発するが、大腸への転移は少ない。さらに膵臓癌の大腸転移は、ほとんどが直接浸潤で、大腸の狭窄を起こすことが多く、粘膜面に腫瘤を形成することはほとんどない。今回、S状結腸に播種性転移と考えられる腫瘤を形成した進行膵尾部癌を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。 |