セッション情報 パネルディスカッション19(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器臓器移植後の免疫抑制療法の新展開

タイトル 外PD19-2:

肝移植後長期における拒絶反応症例の検討

演者 川岸 直樹(東北大病院・移植・再建・内視鏡外科DELIMITER東北大・臓器移植医療部)
共同演者 石田 和之(東北大病院・病理部), 里見 進(東北大病院・移植・再建・内視鏡外科)
抄録 【目的】東北大学病院における肝移植後長期における拒絶反応、免疫抑制療法について報告する。【方法】2000年7月から2011年12月までに肝移植した149症例のうち133例(89.3%)が3ヶ月以上生存した。そのうちの23例で移植後3ヶ月以上経過してから肝生検で急性拒絶反応と診断された。この23例について、免疫抑制療法、合併症などにつき検討した。【結果】23例の原疾患は胆道閉鎖症15例、原因不明4例、C型肝硬変1例、B型肝硬変1例、PSC1例、PBC1例であった。男10例、女13例、移植時の年齢は平均16.1歳(11ヶ月から51歳)、平均観察期間は11.2年であった。3例が観察期間中に死亡したが、1例はPSCの再発、1例はC型肝硬変再発、1例は胆管炎による肝不全であった。晩期急性拒絶反応は、23例に30回、肝生検により移植後平均2.5年(3ヶ月から9年)に診断された。1例で4回(移植後1、3、6、8年)診断されたものもいた。免疫抑制剤の怠薬によると思われたものは4例あったが、その他は拒絶反応の原因は不明であった。このうち8例は移植後5年以上経ってから診断されていた。これら全ての拒絶反応は、急性細胞性拒絶反応で、rejection activity indexは、3から5であった。3例はABO不適合移植であったが、抗体関連型拒絶反応はみられなかった。拒絶反応診断時、17症例がtacrolimus、6症例がcyclosporineであり、20例がカルシニューリン阻害剤の単独投与中であった。免疫抑制剤offの症例はいなかった。2症例でステロイド抵抗性拒絶反応が起こり、デオキシスパーガリンを使用した。30回の拒絶反応治療で重篤な合併症は発生しなかった。慢性拒絶反応と診断された症例はなかった。【結論】肝移植後3ヶ月以上生存した症例のうち、約17%の症例で、晩期急性細胞性拒絶反応がおこっていた。肝移植後長期で安定した時期になっても、急性拒絶反応は起こりうる。更なる移植後長期成績を得るためには、終生にわたる拒絶反応に対する監視が必要である。
索引用語 肝移植, 拒絶反応