セッション情報 一般演題

タイトル

金属ステントでの減圧後に切除可能であったS状結腸癌の1例

演者 久保 秀文(社会保険徳山中央病院外科)
共同演者
抄録 大腸狭窄に対して金属ステントself-expandable metallic stent(以下SEMS)法は全国的に2010年1月から広く保険診療として施行可能となった。今回、われわれはこのSEMSが減圧処置として非常に有用であったS状結腸癌の1例を経験したので報告する。症例は71歳 男性,2012年5月北海道旅行中であったが、突然の腹痛で地域の病院へ緊急搬送された。注腸透視,下部消化管内視鏡検査でS状結腸癌の閉塞性イレウスと診断された。山口県での手術を強く希望されたため狭窄部へwallFlex Colonic Stent(22×60mm)が留置された。CTでは他臓器への転移は認めなかった。ステント留置より5日後に帰省し、6日後当院受診となった。ステント留置より19日目に手術を施行したが移動中や入院後もイレウス症状を呈することなく、通常の術前腸管処置でも腹痛の増悪などを起こすことは無かった。手術所見で明らかな肝転移、腹膜播種は認めず、2群リンパ節郭清を伴うS状結腸切除術を行った。摘出標本では金属ステントは逸脱なく固定されており口側の粘膜面の浮腫は認めたが拡張は認めなかった。病理組織診断では中分化型管状腺癌,深達度ss,ly1,v1,n0であった。術後経過良好で第9病日目に軽快退院した。現在外来にて経過観察中であるが、明らかな再発を認めていない。内視鏡的金属ステント術では従来の減圧法に比較して患者のQOLをほとんど損なうことなく根治手術までの待機時間を明らかに短縮することが可能である。本症例に対しては緊急手術回避目的でステント留置術がなされたが今後、通常の術前腸管処置困難例においてもルーチン化される処置になるものと思われる。大腸狭窄に対するSEMS療法は患者への過大侵襲を加えることなく緊急手術も回避して術前減圧処置が可能となるため、保険収載を機に今後は普及が予想され、患者のQOL向上に貢献するものと思われる。また、今回われわれはSEMS留置による腸管・腸間膜の脆弱性や腸管浮腫を想定し安全性の面より開腹術としたが、SEMS留置により十分なる減圧が行われていればSEMSと腹腔鏡下大腸切除の組み合わせは安全な治療となり得るものとも考える。
索引用語 金属ステント, 大腸閉塞