セッション情報 一般演題

タイトル

下血発症前に腸管の超音波断層像を観察した虚血性腸炎の一例

演者 檜垣 真吾(聖比留会セントヒル病院)
共同演者 浜辺 崇衣(聖比留会セントヒル病院), 松元 祐輔(聖比留会セントヒル病院)
抄録  虚血性腸炎は 動脈硬化症の危険因子をもつ高齢者に発症しやすい。虚血の発症部位は、脾弯曲からS状結腸が多いが、これは側副血行の乏しい同部位の腸管粘膜血流が低下しやすいためと考えられている。ただ、一過性の虚血性腸炎で、この血流障害が腸管局所の微小循環障害なのか、腸間膜動脈本幹の血流障害なのかは明確になっていない。今回われわれは、胃痛で発症し、下血が現れるまでの20時間の間に腹部エコー検査、腹部造影CT検査で大腸の粘膜障害の部位と炎症の程度また腸間膜血流を検索しえた一例を経験したので報告する。症例は83歳の男性で、高血圧、DM、高脂血症はない。胃痛を主訴とする。下痢、発熱はない。 受診時に施行した腹部エコー検査で、上行結腸:10.8mm, 横行結腸:5.5mm,下行結腸:5.3mm, S状結腸:2.6mmと右側結腸優位の壁肥厚を認めた。同所見から腸管出血性大腸菌性腸炎も否定できないため入院加療とした。血液学的には、WBC 8800/μl、CRP0.1mg/dl、CPKは109IU/Lと正常であった。入院後、胃痛発症16時間目の腹部造影CT検査では、大腸壁の肥厚が著明であったが、上下腸間膜動脈の血流は保たれていた。胃痛が発症して20時間目に下血し、緊急で大腸内視鏡検査を施行したところ下行結腸にのみに限局して腸管粘膜の浮腫と発赤、縦走傾向のあるびらんを認めた。同時に行った腹部エコー検査では、上行結腸:7.5mm,横行結腸:5.0mm,下行結腸:7.8mm,S状結腸:3.9mmと粘膜肥厚の程度が左側結腸に移行して重症化していた。下血発症1週間後の腹部エコー検査では、上行結腸:4.8mm,と下行結腸:4.0mmだけに壁肥厚が残存していた。以後患者は下血なく経過良好である。以上の経過を見ると虚血性腸炎における炎症部位を腹部エコー検査で捕らえると、内視鏡的で観察できる粘膜障害よりも広範囲で、かつ時間の経過とともに動的に部位を変えている。 したがって、虚血性腸炎では、腸間膜動脈本幹で血流障害が一次的に起こっているものと推測された。
索引用語 虚血性腸炎, 腹部超音波検査