セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル

肝硬変合併大腸癌術後に生じたストーマ静脈瘤・門脈血栓に対し、血管内治療が奏効した一例

演者 大山 淳史(岡山市立市民病院 肝疾患センターDELIMITER岡山市立市民病院 消化器病センター)
共同演者 狩山 和也(岡山市立市民病院 肝疾患センター), 能祖 一裕(岡山市立市民病院 肝疾患センター), 大西 理乃(岡山市立市民病院 肝疾患センター), 湧田 曉子(岡山市立市民病院 肝疾患センター), 西村 守(岡山市立市民病院 消化器病センター), 東 俊宏(岡山市立市民病院 肝疾患センター)
抄録 症例は70代男性。以前よりC型肝硬変で当院通院中であった。平成23年9月中旬から排便時出血あり。下部内視鏡検査にて3/4周のtype2、S状結腸癌を認め、12月にS状結腸切除術を施行。術前のdynamic CTにて直腸周囲に発達した側副血行路を認めた。術中所見で門脈圧亢進による側副血行路の発達が高度であったため、腸管吻合は行わず人工肛門造設となった。平成24年3月に腹水コントロール目的に入院中、ストーマからの出血あり。退院後もストーマからの出血を認めたが少量の出血であり、圧迫止血可能であったため放置していた。 5月25日にストーマ内に多量の出血を認め、出血性ショックとなったため再入院。入院後ストーマ静脈瘤からの出血を繰り返し結紮によって止血を得ていたが、結紮部位とは異なる静脈瘤からの出血が続き徐々に肝予備能の低下、腹水増加を認めた。ストーマ周辺の発達した静脈瘤の流入路を結紮する方法も検討したが、門脈血栓による門脈圧亢進が原因の出血であり、経皮経肝的に門脈血栓除去と静脈瘤の硬化術を施行した。P3より穿刺し、下腸間膜静脈分岐部で造影しストーマ周囲の静脈瘤を確認。流入路にcoilingを行い、流入路を遮断。ついで門脈左右分岐部で造影し、門脈血栓を確認。ウロキナーゼ投与後血栓を吸引。右門脈血栓は除去不可能であったが、門脈本幹からの血栓除去は成功。左門脈本幹が造影されることを確認し終了。術後は完全止血が得られ、ストーマの周囲の静脈瘤の退縮を認めた。血栓予防のためワーファリンの内服を開始し、退院となった。 
肝硬変患者の大腸癌術後のストーマにできる静脈瘤は肝予備能不良の場合易出血性が強く、門脈圧亢進症が改善されない限り再発を繰り返す。本症例では静脈瘤形成の原因に門脈血栓による門脈圧亢進が大きく関与していた。経皮経肝的に静脈瘤硬化術と門脈血栓除去術を同時施行し、止血が得られた症例を経験したので若干の考察を加えて報告する。
索引用語 ストーマ, 肝硬変