セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル

経直腸的EUS-FNAにて確定診断した肝細胞癌骨盤内腹膜播種の1例

演者 山根 昌史(鳥取大学医学部附属病院卒後臨床研修センター)
共同演者 的野 智光(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 原田 賢一(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 三好 謙一(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 木科 学(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 藤瀬 幸(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 加藤 順(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 徳永 志保(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 岡本 欣也(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 法正 恵子(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 岡野 淳一(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 前田 直人(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 孝田 雅彦(鳥取大学医学部附属病院消化器内科), 村脇 義和(鳥取大学医学部附属病院消化器内科)
抄録 【症例】70歳代、男性。【現病歴】1997年3月、当科にてB型慢性肝炎と診断し、抗ウイルス療法を行っていた。2008年2月、肝S5に径17mm大の肝細胞癌(高~中分化型HCC)を認め、ラジオ波焼灼術を施行した。2010年7月、門脈後区域枝に腫瘍浸潤を認め、FARM+MMC+5-FU+CDDPによる肝動注療法を施行した。その後、同4剤及び低用量FP肝動注療法を行った。2011年10月中旬より下腹部痛、食欲低下を自覚し、腹部CTで骨盤内腫瘤を指摘され、精査加療のため入院となった。【既往歴】17歳:肺結核。20歳:事故で左前腕切断。輸血歴なし。【家族歴】弟がB型肝硬変で死亡。【生活歴】飲酒・喫煙なし。【入院時現症】腹部:平坦、軟、下腹部に腫瘤を触知。【血液検査】T.Bil 1.0 mg/dL 、Alb 3.1 g/dL 、PT 76.1 % 、PIVKAII 121 mAU/mL、AFP 8.8 ng/mL(L3 52.7%)、CEA <0.8 ng/mL、CA19-9 4.1 U/mL【臨床経過】腹部CTでは骨盤底右側に4cm大の動脈相で不均一に造影される腫瘤があり、直腸は圧排され、亜イレウス様であった。下部消化管内視鏡検査ではRsは壁外からの圧迫により狭小化していた。経直腸的EUSでは、Ra~Rs壁外に不整形の低エコー腫瘤を認め、その頭側に連続して約3cm強の類円形の腫瘤を認め、骨盤内腫瘤の組織診断目的にEUS-FNAを施行した。病理学的に中>低分化型HCC(索状~充実状)と診断された。両側内腸骨動脈より動注療法を施行したが、治療効果はみられなかった。その後、治療継続が困難となり、2012年6月永眠された。【考察】第18回全国原発性肝癌追跡調査報告において、HCCの腹膜転移は0.6%と極めてまれであるが、十分な検索が行われていない場合も多い。EUS-FNAでは観察可能な腹腔内病変は技術的に穿刺適応であり、中路らによると消化管・膵外の腹腔内・後腹膜および骨盤内病変120件に対し、117件(97.5%)で診断可能であったと報告している。今回我々は、経直腸的EUS-FNAにてHCCの骨盤内腹膜播種と診断した。腹腔内腫瘤の原因が不明な場合、EUS-FNAは確定診断、治療方針の決定に有用であることが示された。
索引用語 肝細胞癌腹膜播種, EUS-FNA