抄録 |
症例は60歳代男性。糖尿病、陳旧性脳梗塞で近医にて加療中であった。2006年3月下旬に心窩部痛出現。翌日には黄疸も出現したため、精査加療目的で当院当科紹介となる。血液検査上は炎症反応及びビリルビン、胆道系酵素の上昇を認めたが、CT、MRIで総胆管の拡張や結石は認められず、総胆管が一過性に閉塞し胆管炎を発症したものと考えられた。抗生剤の投与のみで軽快した。なお、この時の画像検査で膵頭部、尾部にそれぞれ分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)が認められ、経過観察のため退院後半年ごとの外来受診とした。しかし、2007年7月の受診を最後に外来受診を自己中断し、近医で糖尿病の加療のみ続けられていた。2012年5月に糖尿病の急激な増悪が認められたため、当科に再度紹介となる。諸検査の結果、膵頭部のIPMNは著変なかったが、膵尾部のIPMNは増大しており、また膵体部に通常型膵癌が認められたため、外科にて膵体尾部切除術が施行された。 IPMNの発癌形式については、IPMNが進展し上皮内癌を経て浸潤癌化するIPMN由来浸潤癌と、IPMNには著変を認めずに通常型膵癌を合併する場合がある。両者を早期に発見するため、IPMN症例に対しては厳重な経過観察が必要と考えられた。 |