セッション情報 | 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄) |
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タイトル | 肝転移巣内の膿瘍に伴う敗血症性ショックにて搬送された直腸神経内分泌癌の1例 |
演者 | 三浦 慎一朗(県立広島病院 臨床腫瘍科) |
共同演者 | 山内 理海(県立広島病院 臨床腫瘍科), 新田 朋子(県立広島病院 臨床腫瘍科), 土井 美帆子(県立広島病院 臨床腫瘍科), 小道 大輔(県立広島病院 消化器内科), 篠崎 勝則(県立広島病院 臨床腫瘍科) |
抄録 | 【症例】 69歳男性。発熱を伴う肝腫瘤の精査・加療目的に近医より当院へ紹介となった。来院時、意識は混濁しており、体温39.5 ℃、血圧53/32 mmHg、四肢は温かくwarm shockの状態であった。造影CT検査にて、周囲に造影増強効果のある5 cm大の腫瘤を多数認め、転移性肝腫瘍が強く疑われた。そのうちの1つは、内部に空洞と鏡面形成を伴い、肝膿瘍の合併と判断した。敗血性ショックの状態であるため、EGDT(Early Goal-Directed Therapy)に従い大量補液・カテコラミン投与、抗菌薬の投与を開始した。速やかに経皮経肝膿瘍ドレナージを施行したところ、汚臭の強い膿の排出を認めた。エンドトキシン吸着療法を含む集中治療を行い、翌日にショック状態を離脱した。肝膿瘍の培養から連鎖球菌ならびに複数グラム陰性桿菌、嫌気性菌の混合感染と判明した。血液培養からはMRSAが検出され、バンコマイシン投与を追加した。全身状態の改善を待ち、原発巣の精査を行ったところ、第7病日の大腸内視鏡検査で 直腸Rb部に2型腫瘍を認め、病理診断はatypical carcinoid tumor (well-differentiated neuroendocrine carcinoma)であった。第20病日よりmFOLFOX6 + bevacizumab療法を開始し、第45病日に退院となった。退院後もmFOLFOX6 + bevacizumab療法を継続し、初診から5か月経過した現在、原発巣、肝転移、肝膿瘍はいずれも縮小傾向にある。 今回、我々は肝膿瘍を合併した転移性肝腫瘍(neuroendocrine carcinoma)という非常に稀な病態を経験した。感染の成立機序、初期の局所ドレナージを含む全身管理の重要性、化学療法の選択肢などについて示唆に富む症例であり、若干の文献的考察を加えて報告する。 |
索引用語 | 肝膿瘍, 直腸神経内分泌癌 |