共同演者 |
保田 裕子(岡山大学病院 移植コーディネータ), 八木 孝仁(岡山大学 消化器外科), 安中 哲也(岡山大学 消化器内科), 貞森 裕(岡山大学 消化器外科), 篠浦 先(岡山大学 消化器外科), 楳田 祐三(岡山大学 消化器外科), 吉田 龍一(岡山大学 消化器外科), 佐藤 太祐(岡山大学 消化器外科), 信岡 大輔(岡山大学 消化器外科), 内海 方嗣(岡山大学 消化器外科), 三宅 康広(岡山大学 消化器内科), 白羽 英則(岡山大学 消化器内科), 能祖 一裕(岡山大学 消化器内科), 藤原 俊義(岡山大学 消化器外科), 山本 和秀(岡山大学 消化器内科) |
抄録 |
【目的】2010年7月の臓器移植法改正から2年、2011年9月の修正により劇症肝炎・グラフト不全が10点、重症肝硬変が8点と優先度に差がついてから1年が経過した。修正の前後で移植に辿り着くことが出来た症例と、辿り着けなかった症例がどのように変化したかを明らかにし、現状の制度下での末期肝不全脳死登録患者に対する対応を検討する。【方法】当院で2010年7月の法改正以降に脳死登録申請を行った32症例の経過をまとめる。内訳は:3例が脳死登録せずに生体移植、1例が登録前に状態悪化して登録できず、脳死登録は28例であった。修正前をA群(13例)、修正後をB群(16例)として、それぞれの転帰をまとめる。【結果】生体移植施行が6例(A:4,B:2)、脳死待機中が6例(A:0,B6)、待機死亡が6例(A:2,B4)、肝ガン進展による取り消し1例(A:1,B:0)で、脳死成立は10症例(A:5,B:5)であり、全例がA群9点かB群10点の最高点であった。その内訳は劇症肝炎4症例(A:1,B:3)、慢性肝不全5症例(A:4,B:1)、シトリン欠損症1症例(A:0,B:1)であった。A群とB群で劇症肝炎と慢性肝不全の割合が逆転しており、A群は9点登録から脳死成立まで中央値26日、B群は10点登録から13日であった。【まとめ】脳死移植緊急度の見直しにより劇症肝炎・グラフト不全症例の待機時間は短縮し、救命率の向上が伺われる。その結果当然ではあるが慢性肝不全症例の脳死移植の可能性は非常に低くなっており、脳死待機末期肝硬変状態での積極的治療適応は慎重に検討せざるを得まい。このような症例を修正前までのように救命するにはドナーの増加が必要で、受益者(肝硬変患者)の主治医である消化器内科医が積極的にドナー増加のための活動を行っていくべきであろう。 |