セッション情報 シンポジウム1「消化癌治療のパラダイムシフト 肝胆膵分野」

タイトル

EUS-FNAによる膵癌の病理組織学的診断率の向上

演者 石垣 尚志(広島大学病院 消化器・代謝内科)
共同演者 佐々木 民人(広島大学病院 消化器・代謝内科), 芹川 正浩(広島大学病院 消化器・代謝内科), 小林 賢惣(広島大学病院 消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大学病院 消化器・代謝内科)
抄録 【背景】膵臓はこれまで組織学的診断が困難な臓器とされてきたが、EUS-FNAの普及により、その病理組織学的診断は大きく変化してきた。今回われわれは、EUS-FNAによりもたらされた膵癌治療前の病理組織学的診断率の変化を明らかにする目的で検討を行った。【方法】検討1:当院におけるEUS-FNAの診断成績を疾患ごとに検討した。検討2:Gemcitabineが登場した2000年以降、2011年までに当院で診断した浸潤性膵管癌319症例を対象とし、これをEUS-FNA導入(2004年5月)までのA群と、それ以降のB群に分類したうえで、治療(外科的切除と化学療法)前の病理組織学的診断率について両群間で比較検討した。【結果】検討1:EUS-FNAは301症例(膵癌159例、その他の膵腫瘍41例、慢性膵炎75例、その他26例)に施行した。全体では88.4%の正診率が得られており、疾患別では膵癌88.1%、その他の膵腫瘍87.8%、慢性膵炎90.7%の正診率であった。検討2-1:外科的切除を行った膵癌症例は140例あり、A群44例、B群96例であった。A群44例のうち、膵液細胞診で20例、胆汁細胞診で4例、その他の方法により3例で病理診断が得られ、計27例(61.4%)で術前の組織学的確証が得られていた。B群96例のうち、EUS-FNAで60例、膵液細胞診で20例、胆汁細胞診で3例、その他の方法により1例で病理診断が得られ、計84例(87.5%)で術前の組織学的確証が得られていた。検討2-2:化学療法を行った膵癌症例は121例あり、A群38例、B群83例であった。A群38例のうち、膵液細胞診で12例、胆汁細胞診で2例、その他の方法により3例で病理診断が得られ、計17例(44.7%)で化学療法前の組織学的確証が得られていた。B群83例のうち、EUS-FNAで48例、膵液細胞診で13例、胆汁細胞診で4例、その他の方法により8例で病理診断が得られ、計73例(88.0%)で化学療法前の組織学的確証が得られていた。【結論】EUS-FNAの導入により膵癌に対する病理組織学的診断率が向上するとともに、より多くの症例で組織学的エビデンスに基づいた診療が成されていた。
索引用語 EUS-FNA, 膵癌