セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル

アスピリンとヘパリンによる保存的治療にて軽快した上腸間膜動脈解離の1例

演者 末岡 智志(国立病院機構 岩国医療センター 消化器科)
共同演者 谷岡 大輔(国立病院機構 岩国医療センター 消化器科), 山本 剛(国立病院機構 岩国医療センター 心臓血管外科), 皿谷 洋祐(国立病院機構 岩国医療センター 消化器科), 平田 尚志(国立病院機構 岩国医療センター 消化器科), 横峰 和典(国立病院機構 岩国医療センター 消化器科), 田中 盛富(国立病院機構 岩国医療センター 消化器科), 宮下 真奈備(国立病院機構 岩国医療センター 消化器科), 藤本 剛(国立病院機構 岩国医療センター 消化器科), 田中 彰一(国立病院機構 岩国医療センター 消化器科)
抄録 【症例】39歳女性【主訴】心窩部痛、背部痛【既往歴】なし【現病歴】20XX年1月31日18時頃より心窩部痛、背部痛出現したため近医受診した。単純CTにて上腸間膜動脈血栓症が疑われたため、同日当院紹介となった。来院時は心窩部痛、背部痛は改善していた。造影CT施行したところ、上腸間膜動脈に解離を認め、真腔の閉塞はなく偽腔の一部に造影効果を認めた。また、周囲に側副血行路が発達しており、末梢の腸管虚血は認めなかった。腹部症状の増悪、腸管虚血等の所見がなかったため、心臓血管外科とも相談し保存的治療を行う方針とした。【入院後経過】入院後すみやかにアスピリン100mg/dayとランプラゾール15mg/dayの内服を開始し、ヘパリンカルシウム10000単位/日の皮下注射を2日間併用した。第8病日の2月7日に造影CT再検査したところ、偽腔はやや増大しており、真腔が圧排され狭小化をきたしていた。腹部症状がなく、画像上も腸管虚血所見はなかったため外科的治療や血管内治療は施行せず経過観察の方針とした。入院継続を勧めたが本人の退院希望強いため、アスピリンとランプラゾールの内服を継続することとし、同日退院となった。以降腹部症状の出現なく外来にて2月14日、3月13日に造影CT再検査したが病変部の進行所見はなかった。6月12日のCTにおいては偽腔の狭小化と真腔の拡大を認めており、臨床症状なく経過良好である。【考察】孤立性の上腸間膜動脈解離は比較的まれな疾患であるが、重症例では小腸虚血症状を呈し広範囲小腸切除を必要とする場合もある。現在確立された治療方針はないが文献的報告によると、動脈瘤破裂、頻回の虚血症状、腸管壊死を伴う場合は外科的治療や血管内治療を行い、それらを認めない場合は血圧管理、抗血小板・抗凝固療法などの保存的加療が第一選択となる場合が多い。本症例では、来院時に施行した造影CTで腸管虚血の所見を認めず、腹部症状も軽快傾向にあったため保存的治療を選択した。今回、アスピリンとヘパリンによる保存的加療にて軽快した上腸間膜動脈解離を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 急性上腸間膜動脈解離, 保存的加療