セッション情報 | 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄) |
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タイトル | 多発性肝・骨転移を伴う膵神経内分泌腫瘍に対するエベロリムス投与中に急性腎不全をきたした1例 |
演者 | 播磨 博文(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学) |
共同演者 | 戒能 聖治(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 大野 高嗣(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 末永 成之(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 植木谷 俊之(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 原野 恵(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学) |
抄録 | 症例は60歳代女性。20XX年9月に心窩部違和感を主訴に近医を受診したところ、多発性肝腫瘤を指摘され精査加療目的に当科紹介となった。身体所見では右助弓下に肝を2cm触知した。ホルモン過剰症状は認めなかった。血液検査では軽度肝酵素の上昇を認めた。腹部造影US、腹部造影CTでは造影効果を伴う25mm大の膵腫瘤と多発性肝腫瘤を認めた。PET-CTでは膵腫瘤、多発性肝腫瘤の他、第1、第3腰椎にFDG高集積を認めた。膵腫瘤に対してEUS-FNAを施行し、高分化型膵神経内分泌腫瘍と診断した。非機能性腫瘍であったが抗腫瘍効果を期待し、同年10月よりオクトレオチドを開始した。しかし、腫瘤は徐々に増大傾向を認め、20XX+1年2月にPDと判定し、オクトレオチドを中止、エベロリムスを開始した。エベロリムスは奏功し、同年3月に腫瘤はPRとなった。エベロリムス開始時の有害事象としては口内炎と嘔気を認めるのみであったが、同年4月より嘔吐、食欲不振、尿量低下が出現し、血液検査でBUN 51mg/dl、Cre 7.6mg/dlと腎機能障害を認めたため当科に入院となった。エベロリムスが原因の薬剤性急性腎不全と考え補液を行ったが、無尿が続いたため翌日より人工透析を導入した。その後、感染症の併発もあり全身状態不良となったが、適宜、抗生剤投与などで加療したところ、同年5月より状態は安定した。徐々に自尿も認められるようになり、同年6月に透析離脱可能となった。腎機能は概ね正常化した。投与量を減じてのエベロリムス再投与も考慮されたが本人の同意が得られなかったため、エベロリムスは再開しなかった。 エベロリムスは糞中排泄型の薬剤で腎機能障害患者においても減量は不要である。しかし、本症例のように重篤な腎機能障害をきたす場合も稀にあり、使用には注意が必要である。今後、エベロリムスを使用していく上で示唆に富む症例と思われたため報告する。 |
索引用語 | 膵神経内分泌腫瘍, エベロリムス |