セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル

CA19-9高値をきたした類上皮嚢胞の1例

演者 池本 珠莉(JA尾道総合病院 消化器内科)
共同演者 花田 敬士(JA尾道総合病院 消化器内科), 寺岡 雄史(JA尾道総合病院 消化器内科), 天野 美緒(JA尾道総合病院 消化器内科), 山雄 健太郎(JA尾道総合病院 消化器内科), 今川 宏樹(JA尾道総合病院 消化器内科), 橋本 義政(JA尾道総合病院 消化器内科), 福本 晃(JA尾道総合病院 消化器内科), 飯星 知博(JA尾道総合病院 消化器内科), 小野川 靖二(JA尾道総合病院 消化器内科), 平野 巨通(JA尾道総合病院 消化器内科), 天野 始(JA尾道総合病院 消化器内科), 日野 文明(JA尾道総合病院 消化器内科), 福田 敏勝(JA尾道総合病院 外科), 米原 修治(JA尾道総合病院 病理研究検査科)
抄録 【症例】47歳、男性【主訴】CA19-9高値【既往歴】十二指腸潰瘍【嗜好歴】喫煙:なし、アルコール:機会飲酒【現病歴】平成24年3月 近医にて施行した定期採血にてCA19-9 が88.2と高値を認めたため、当院紹介となった。当院の血液検査ではCEAは正常値であったものの、CA19-9は876.5U/mLと著明な上昇を認めた。膵酵素の上昇や耐糖能異常は認めなかった。腹部CTでは膵尾部から脾門部にかけて径60mm大の多房性嚢胞性病変を認めた。病変は脾臓と距離があり、膵臓との連続性は不明瞭であった。また病変は辺縁に薄い充実成分を有し、同部位は造影早期にて濃染し、平衡相でも造影効果が持続していた。MRIでは嚢胞成分はT1強調像で低信号、T2強調像で淡い高信号であり、粘液成分を含む液体の貯留が疑われた。また充実成分はT1強調像で低信号、T2強調像では高信号であった。MRCPでは主膵管は膵尾部で狭細化を認めるも、尾側膵管の拡張は認めなかった。造影CTにおける充実成分の造影効果及びMRIでの信号は、脾実質と同様の所見を呈していた。EUSでは膵尾部と脾臓の間に60mm大の嚢胞性病変を認め、嚢胞内は均一なモザイクエコーパターンであった。ソナゾイドによる造影EUSでは造影CTと同様の造影態度で、かつ膵実質と異なる造影パターンを示した。超音波プローブと脾臓の距離が離れていたため、脾実質との比較は困難であった。以上より類上皮嚢胞を第一に考え、リンパ上皮嚢胞、粘液嚢胞性腫瘍、嚢胞変性を伴う膵神経内分泌腫瘍が鑑別診断として挙げられた。CA19-9が高値であり、悪性腫瘍の可能性も否定できず、本人の希望もあり、十分なインフォームド・コンセントのもと開腹による膵尾部切除および脾臓合併切除施行となった。術後病理では嚢胞壁は異型を伴わない重層扁平上皮で構成され、一部に脾臓組織を認めた。以上より、副脾由来の類上皮嚢胞と診断した。術後2か月のCA19-9は11.9U/mLと正常範囲内に低下した。【考察】類上皮嚢胞は稀な腫瘍である。今回CA19-9高値を契機に発見された副脾由来の類上皮嚢胞の1例を経験したため、若干の文献的考察を交えて報告する。
索引用語 類上皮嚢胞, CA19-9