セッション情報 シンポジウム2「消化癌治療のパラダイムシフト 消化管分野」

タイトル

当院における食道癌診療の変遷

演者 林 暁洋(鳥取大学 機能病態内科学)
共同演者 八島 一夫(鳥取大学 機能病態内科学), 河口 剛(鳥取大学 機能病態内科学), 原田 賢一(鳥取大学 機能病態内科学), 村脇 義和(鳥取大学 機能病態内科学)
抄録 【目的】食道癌内視鏡診療は、ヨード染色とEMRの開発、そして近年における拡大・画像強調内視鏡の登場、ESDの確立により大きく進歩している。また、外科治療、化学放射線療法の成績も向上している。今回、我々は当院における食道癌診療の変遷と現況について、治療状況、患者背景を踏まえ検討した。【対象および背景】当院消化器内科・外科にて2004年1月から2011年12月までに食道癌治療を行った304症例(男274:女 30、平均年齢 66.7歳)、331病変を対象とした。臨床的進行度はStage0 66例(21.7%)、StageI 48例(15.8%)、StageII 49例(16.1%)、StageIII 60例(19.7%)、StageIV 81例(26.6%)であり、組織型は、扁平上皮癌が319病変(95.8%)、腺癌が6病変(1.8%)などであった。治療法は、内視鏡的治療63例(20.7%)、化学・放射線療法124例(40.8%) 、外科的治療104例(34.2%)、BSC11例(3.6%)であった。患者背景として飲酒歴は86.8%、喫煙歴は85.2%に認め、既往を含む重複癌合併例は、103例(33.9%)であった。【結果】年次別症例数(治療内容割合, Stage割合)は'04-'05 64例(内視鏡的治療 15.6%:外科治療 42.2%,化学・放射線療法37.5%, Stage0 17.2%,StageI 18.8%,stageII 21.9%,stageIII 21.9%,stageIV 20.3%)、'06-'07 67例(内 16.4%:外 37.3%, 化 38.8%, Stage0 16.4%,I 19.4%,II 20.9%,III 13.4%,IV 29.9%)、'08-'09 89例(内 18.0%:外 28.1%, 化 50.6%, Stage0 20.2%,I 16.9%,II 12.4%,III 18.0%,IV 32.6%)、'10-'11 84例(内 31.0%:外 32.1%, 化 34.5%, Stage0 31.0%,I 9.5%,II 11.9%,III 25.0%,IV 22.6%)であった。症例数は増加傾向であり、特にStage0の粘膜癌が増加しており、内視鏡的治療も増加していた。粘膜癌(70例)のうち、既往を含む重複癌合併例は、31例(44.3%)(頭頸部癌14例,胃癌13例,大腸癌3例,食道癌2例,その他6例;重複6例)であった。【結論】内視鏡診断能の向上により、食道癌の早期発見が増加していると思われるが、進行癌もいまだ多く、ハイリスク群に対して適切なスクリーニングを施行することが重要と考えられた。
索引用語 食道癌, 変遷