セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル

経管栄養チューブ挿入後に特発性腸管気腫症、門脈ガス血症を呈した十二指腸癌の1例

演者 安井 七々子(福山医療センター 消化器内科)
共同演者 豊川 達也(福山医療センター 消化器内科), 表 静馬(福山医療センター 消化器内科), 岡本 明子(福山医療センター 消化器内科), 宮阪 梨華(福山医療センター 消化器内科), 渡辺 一雄(福山医療センター 消化器内科), 寺尾 正子(福山医療センター 消化器内科), 村上 敬子(福山医療センター 消化器内科), 友田 純(福山医療センター 消化器内科)
抄録 門脈ガス血症、腸管気腫症はともに腸管損傷に関与する稀な病態であり、両者の合併は強く腸管壊死を示唆する所見とされる。腸管壊死を伴う門脈ガス血症は緊急手術が必要となるが、近年は画像の進歩により、少量の門脈ガスでも指摘できるようになり、腸管壊死を伴わない保存的治療が可能な例も増えている。今回我々は、経管栄養チューブを留置し、経腸栄養投与開始後に腹痛が出現し、腸管気腫症と門脈ガス血症を併発したため、緊急手術を行った十二指腸癌の1例を経験したので報告する。症例は76歳女性、主訴は嘔吐。2ヶ月前より食後の嘔吐、体重減少を認めていた。造影CTにて十二指腸水平脚の腫瘍性閉塞を認めた。腸管栄養目的に腫瘍の肛門側に経管栄養チューブを留置した。経腸栄養投与開始3日目に臍周囲に強い痛みが出現し、経管栄養チューブを抜去したが痛みが持続するためCT施行し、腸管壁内気腫と門脈内空気塞栓の多発を認め、緊急開腹手術となった。術中所見として腹水、回腸末端の浮腫を認め、腸管気腫に伴う門脈気腫と判断し、穿孔や虚血、壊死変化は認めず、そのまま閉腹した。術後4日目のCTにて門脈気腫は消失し、栄養不良のため、中心静脈栄養継続し、術後17日目に膵頭十二指腸切除術を施行した。本症例では緊急開腹手術を施行したが、壊死変化を認めず、閉腹した。結果的には、保存的加療でも治療可能であったといえる。手術の必要性を決定する方法として、まず画像での重症度診断がある。当症例では、CTにて腸管壁内の円形~類円系の気腫像が確認された。腸管壁内のガス像の形態は重症度と相関し、非円形~不整線状ガス像に比して円形~類円系の気腫像は比較的軽症例を示唆する所見であるとの報告がある。一方、腹水、門脈内ガスは重症度診断の一助になるとの報告もある。また、腸管壊死を示唆する著明なアシドーシス、乳酸値高値は認められなかった。治療方法の選択は困難であるが、当症例のように腹部症状の訴えが強い場合は、迅速な緊急手術により、未然に腸管壊死、門脈塞栓の発現を防ぐことが可能であると考える。
索引用語 特発性腸管気腫症, 門脈ガス血症