セッション情報 パネルディスカッション19(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器臓器移植後の免疫抑制療法の新展開

タイトル 外PD19-3指:

当科における成人生体肝移植術後免疫抑制治療の戦略

演者 篠田 昌宏(慶應義塾大・外科)
共同演者 田邉 稔(慶應義塾大・外科), 北川 雄光(慶應義塾大・外科)
抄録 【背景】生体肝移植術後長期生存例が増加し、免疫抑制薬については長期合併症を考慮した疾患・症例毎の選択が求められている。当科で試行しているC型肝炎、ABO血液型不適合症例に対する免疫抑制プロトコールやその成績、代謝拮抗薬薬物動態の基礎的検討を紹介する。【方法】成人生体肝移植術後の免疫抑制は、カルシニューリンインヒビター(CNI)、ステロイド、代謝拮抗薬(MMFまたはミゾリビンMiz)の3剤併用を基本としている。I) C型肝炎症例では、ステロイドに代えてシムレクトを用いステロイドフリーとし、拒絶発生時もステロイドパルスは可能な限り施行しない方針である。II) ABO不適合では、術前にリツキシマブ、Miz、ステロイドを投与、血漿交換を施行。術後は、CNI、ステロイド、Miz の基本3剤に加えPGE1、FOY、メチルプレドニゾロンの3剤門注療法を施行する。III) Miz使用症例の血中濃度を測定し薬物動態を解析した。【結果】I) HCV陽性症例は22例。移植後6ヶ月の肝炎再発率は、ステロイドフリープロトコール導入後に改善した。導入前に急性拒絶に対してステロイドパルスを施行した2例が後にFCHと診断され1例を失ったが、導入後は拒絶を1例認めMMF導入で対処可能であった。移植5年後のC型肝炎患者では慢性腎臓病ステージが不良である傾向を認めた。II) ABO不適合成人生体肝移植14例の3年生存率は77%で、血液型一致・適合症例の79%と比しても遜色のない結果であった。急性抗体関連拒絶反応は1例も認めなかったが、ABOダブル不適合移植後14か月に肝内胆管非吻合部に多発狭窄を認めた症例を経験している。III) 標準化Miz血中濃度のトラフ値は腎機能(eGFR)と有意に相関することが判明した。【結語】当科のC型肝炎、ABO不適合プロトコールはいずれも良好な成績をおさめているが、いずれの病態においても長期合併症の発生を示唆する結果が得られ、漫然とした免疫抑制継続や安易な免疫抑制減量に対する警鐘と理解している。Miz薬物動態の理解は、CNI、ステロイド減量の一助となる可能性がある。
索引用語 生体肝移植, 免疫抑制