セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル

アメーバ性肝膿瘍再発を契機にHIV感染症の診断に至った一例

演者 大谷 真帆子(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター/中国がんセンター 消化器科)
共同演者 檜山 雄一(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター/中国がんセンター 消化器科), 河野 博孝(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター/中国がんセンター 消化器科), 保田 和毅(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター/中国がんセンター 消化器科), 山下 賢(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター/中国がんセンター 消化器科), 水本 健(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター/中国がんセンター 消化器科), 木村 治紀(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター/中国がんセンター 消化器科), 山口 敏紀(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター/中国がんセンター 消化器科), 山口 厚(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター/中国がんセンター 消化器科), 桑井 寿雄(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター/中国がんセンター 消化器科), 高野 弘嗣(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター/中国がんセンター 消化器科)
抄録 症例は52歳男性,主訴は発熱.来院5日前から39℃前後の発熱と,日に数回程度の水様便が出現し,便はときに赤色であった.近医にて点滴加療などを受けたが改善せず,症状増悪のため当院搬送となった.既往歴として,約15年前に肝膿瘍に対して他院での加療歴があった.最近の海外渡航歴はなかった.WBC 10900/μl,CRP 26.58mg/dlと炎症反応上昇あり,造影CTで肝S3とS5の2箇所に低吸収域を認め,腹部超音波でも同部にモザイク状の低エコー域がみられた.肝膿瘍の診断で当科入院とし,第2病日に双方の膿瘍にドレナージを施行した.得られた茶色膿性排液からアメーバ虫体が同定され,アメーバ性肝膿瘍の診断に至った.過去の肝膿瘍加療歴について他院に問い合わせたところ当時も抗赤痢アメーバ抗体が陽性であったことが確認され,再発例であることが判明した.また,下部消化管内視鏡検査で盲腸から上行結腸に多発するたこいぼ状潰瘍を認め,内視鏡所見からアメーバ性腸炎とも診断した.メトロニダゾール内服加療を開始し,以後は発熱や炎症反応は改善傾向となり,水様便も消退傾向となった.肝膿瘍も緩徐に縮小傾向となり,ドレーン抜去後も膿瘍の拡大や症状再燃なく経過した.また,CD4/8比0.14と低値で,HIVスクリーニング検査陽性であり,当院血液内科の併診にて精査を行った.HIV-1抗体陽性,HIV-1RNA陽性であり,HIV感染症の診断に至った.一旦血液内科に転科し,合併症等のさらなる検索や抗HIV療法導入への準備を整備したうえで,自宅退院となった.その後,外来でAnti-Retroviral Therapy (ART)を開始された.今回我々は,再発性および多発性のアメーバ性肝膿瘍の治療をおこない,それを契機にHIV感染症の診断に至った一例を経験した.若干の文献的考察等を加えてこれを報告する.
索引用語 アメーバ性肝膿瘍, HIV