セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル

当院における大腸憩室出血症例の検討

演者 上田 直樹(松江市立病院)
共同演者 山田 稔(松江市立病院), 吉村 禎二(松江市立病院), 河野 通盛(松江市立病院), 田中 新亮(松江市立病院), 三浦 将彦(松江市立病院), 村脇 義之(松江市立病院), 谷村 隆志(松江市立病院), 杉原 誉明(松江市立病院)
抄録 【目的】大腸憩室疾患は高齢化に伴い増加傾向にあり、臨床診療において重要性を増している。その中でも大腸憩室出血は出血部位の特定や止血が困難な症例も多く、治療方針の決定に難渋することもある。当院における大腸憩室出血症例について検討した。【対象】2005年8月から2012年6月までの大腸憩室関連疾患の入院数は180例(平均年齢 53.6歳、男性:女性=123:57)あり、そのうち37例(平均年齢71.5歳、男性:女性=26:11)に大腸憩室出血を認めた。大腸憩室出血37例を対象に診断方法、治療方法について検討した。【成績】大腸憩室出血症例37例において、入院時ヘモグロビンの平均値は11.7(5.3-15.9)g/dlで、入院中のヘモグロビン最低値の平均値は9.0(5.3-17.0)g/dlであり、輸血を14/37例(37.8%)で必要とした。入院時合併症のため抗凝固薬・抗血小板薬を使用していた症例は10/37例(27.0%)であった。診断目的で全例に腹部CT検査が行われていた。下部内視鏡検査が34/37例(91.9%)で行われ、そのうち出血部位の同定が12/34例(35.3%)で可能であり(上行結腸4例、横行結腸2例、下行結腸1例、S状結腸5例)、内視鏡的止血術が行われた。しかし、4/12例(33.3%)で止血は困難であり、緊急IVRを必要とした。その結果、大腸憩室出血症例全体の中で15/37例(40.5%)で緊急IVRが必要となった。14/37例(37.8%)は保存的に自然止血し、最終的に出血による外科手術となった症例はなかった。【結論】一般的に下部内視鏡検査は大腸憩室出血において他疾患との鑑別診断には有用であるが、大腸憩室出血では多数の憩室が存在するため下部内視鏡検査での出血部位の同定は難しく、当院での出血部位の同定可能であった症例は3割程度であった。出血を繰り返す症例では緊急IVRによる診断・治療が重要であり、状況に応じた時期を逸しない各治療の適応判断が重要と考えられた。
索引用語 大腸憩室出血, 大腸憩室疾患