セッション情報 一般演題

タイトル

小腸内視鏡にて診断し得た小腸脂肪腫による腸重積の1例

演者 結城 美佳(出雲市立総合医療センター)
共同演者 駒澤 慶憲(出雲市立総合医療センター), 楠 真帆(出雲市立総合医療センター), 福原 寛之(出雲市立総合医療センター), 雫 稔弘(出雲市立総合医療センター)
抄録 【症例】76歳、女性。約5年前から繰り返す下腹部痛あるも、上部・下部消化管内視鏡検査などでは特に異常所見がなく近医にてIBSとして内服加療されていた。H23年6月、便潜血陽性と慢性貧血精査のため、上部・下部消化管内視鏡検査を施行されたが異常所見は認めなかったものの、腸管エコーにて下腹部腫瘤疑われたため精査目的で当院紹介となった。小腸カプセル内視鏡検査(CE)を施行したところ、上部回腸に表面にびらんをともなう隆起性病変を認めた。腹部CTにて下部小腸に腸重積所見と先進する内部均一なfat dencityの低濃度腫瘤像を認めた。ダブルバルン小腸検査(DBE)では、表面は正常粘膜で覆われ頂部に浅いびらんを伴う正色調の粘膜下腫瘍を認めた。鉗子で圧迫すると軟らかくCushion sign陽性であり、小腸脂肪腫を疑う所見であった。腫瘍径は約30mmで同部に点墨を施行し、外科的腫瘍切除術を行った。開腹時も腫瘤が先進する腸重積状態であり、重積解除と腫瘍を含め8cmの小腸切除を行った。病理所見では病変首座を粘膜下層とする小腸脂肪腫であり、一部では筋層を圧排して増生し筋層の排薄化を認めた。手術後貧血は改善、下腹部痛も認めず経過良好である。【考察】小腸腫瘍は消化管腫瘍の1~5%を占め、小腸良性腫瘍には平滑筋腫,脂肪腫,神経線維腫,および線維腫などがあり、その中で脂肪腫は2割程度で直径が25mmを超えるとイレウスのリスクが高くなると報告されている。以前はほとんど手術症例での報告であったが、近年CEやDBEなどにより内視鏡的に全小腸観察が可能となり、今後発症後から早期での病変発見増加が予想される。本症例はこれまでイレウスの既往はないものの繰り返す下腹部痛を認めていたが、下部消化管内視鏡検査で特に所見を認めないことからIBSとして加療されていた。しかし実際には小腸脂肪腫による腸重積を繰り返していた可能性が高く、今回小腸内視鏡にて確定診断し治療を行うことができたことは大変有用であった。【結語】長期の病悩期間の後、小腸内視鏡にて診断し得た小腸脂肪腫による腸重積の1例を経験したので報告する。
索引用語 小腸脂肪腫, 小腸内視鏡