セッション情報 シンポジウム2「消化癌治療のパラダイムシフト 消化管分野」

タイトル

当科の早期胃癌に対する内視鏡的治療の変遷

演者 五嶋 敦史(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学)
共同演者 西川 潤(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 岡本 健志(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 柳井 秀雄(関門医療センター 臨床研究部), 坂井田 功(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学)
抄録 目的:早期胃癌に対するStrip biopsy法(以下SB法)は簡便・短時間で施行可能であるが、切除可能な腫瘍径に制限があり、分割切除による局所再発等の問題点を有していた。一方、内視鏡的粘膜下層剥離術(以下ESD)は、大きな病巣や瘢痕を伴う病巣の一括切除を可能にした優れた方法であり、早期胃癌に対する標準的治療法として普及してきている。当科において、SB法単独で治療した時期、ESDへの移行期、ESDを中心に治療している現在、それぞれの治療成績を検討し、早期胃癌の内視鏡的治療の変遷について検討する。方法:(1)SB法単独で治療した早期胃癌341病巣の治療成績を検討するとともに不完全切除や局所再発の要因を検討した。(2) (1)の成績に基づいて、SB法の適応をM・L領域かつ前壁あるいは大弯に存在する10mm未満の病巣、ESDの適応をそれ以外の病巣と設定した。本適応設定に基づき前向きに治療成績を検討した。(3)ESDで治療した早期胃癌605病巣の治療成績と不完全切除要因を検討した。結果:(1)SB法の完全一括切除率は45.5%(155/341)、局所再発率は7.3%(25/341)であった。不完全切除要因に腫瘍径、U・M領域、小弯が挙げられ、局所再発要因に腫瘍径が挙げられた。(2)早期胃癌156病巣を適応設定によりSB法、ESDに分けた。完全一括切除率は全体で93.5%(146/156)、SB法で92.3%(12/13)、ESDで93.7%(134/143)であった。SB法とESDいずれの症例にも1年後の局所再発を認めなかった。(3)ESDによる完全一括切除率は92.9%(562/605)、治癒切除率は84.3%(510/605)であった。不完全切除要因に腫瘍径、U領域、深達度SM2、未分化型癌、潰瘍(+)が挙げられた。非治癒切除となった2例に局所再発を認めた。結論: ESDの導入により切除成績が向上したが、腫瘍のサイズや局在によってはSB法による治療が可能である。ESDの切除成績の向上には、さらなる手技の改良と術前診断の精度向上が必要である。
索引用語 早期胃癌, 内視鏡的治療