セッション情報 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄)

タイトル

緩徐に増大し肝部分切除を施行した肝血管筋脂肪腫の1例

演者 保田 和毅(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器科)
共同演者 河野 博孝(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器科), 山下 賢(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器科), 水本 健(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器科), 檜山 雄一(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器科), 木村 治紀(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器科), 山口 敏紀(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器科), 山口 厚(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器科), 桑井 寿雄(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器科), 高野 弘嗣(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器科), 吉川 幸伸(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 外科)
抄録 症例は71歳女性。2008年6月子宮体癌に対し当院婦人科にて子宮全摘術両側付属器切除術施行され、その後再発なく経過していた。2010年8月経過観察目的のCTで肝S7に8mm大の淡い低吸収域を認めた。同部位はその後緩徐に増大していき、2012年3月のCTでは30mmまで増大したため精査目的で当科紹介。血液検査ではHBs抗原陰性、HBc抗体陰性、腫瘍マーカーはAFP 5.5 ng/ml、PIVKA 16 mAU/ml、CEA 1.6 ng/ml、CA19-9 4 U/mlといずれも正常範囲内であった。腹部超音波検査では、30mm大、辺縁比較的不明瞭で内部は高、低エコーの混在するモザイク状を呈しており、周囲にhaloを伴った。Dynamic CTでは早期濃染を呈し、後期相でwash outされるもののwash outは比較的軽微であった。EOBプリモビスト-MRIでは早期濃染を認め、肝細胞造影相で低信号を呈した。FDG PET-CTでは異常集積を認めなかった。肝細胞癌と類似した画像所見を呈しているものの典型的ではなく、確定診断の為に2012年5月に超音波ガイド下経皮的腫瘍生検行ったところHBM-45陽性、ごく一部はα-SMA陽性であり肝血管筋脂肪腫と診断された。緩徐ではあるが増大傾向にあったことから手術適応と判断、当院外科にて2012年6月腹腔鏡下肝S7部分切除術を施行。摘出標本は異形に乏しい類上皮様細胞、成熟脂肪細胞、筋性小血管の混在した充実腫瘍組織からなり、免疫組織化学的にはHBM-45陽性、ごく一部はα-SMA陽性であり最終病理診断も肝血管筋脂肪腫であった。肝臓の血管筋脂肪腫は、脂肪組織、平滑筋、および血管で構成されるまれな良性腫瘍である。肝臓の血管筋脂肪腫の画像上の特徴は腫瘍の中で組織成分の比率によって異なり、他の肝腫瘍、特に肝細胞癌と鑑別を要することがある。今症例も肝細胞癌と類似した画像所見を呈していたが、造影CTにて後期相の造影剤のwash outが軽微であった点が肝細胞癌としては非典型的であった。他の多血性腫瘍も疑い、超音波ガイド下経皮的腫瘍生検にて肝血管筋脂肪腫と診断。緩徐に増大し肝部分切除するに至った肝血管筋脂肪腫の1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 肝血管筋脂肪腫, 肝細胞癌