セッション情報 一般演題

タイトル

肝細胞癌に対するシスプラチンを使用した肝動注化学塞栓術後に低Na血症を来した1例

演者 菅 宏美(広島大学病院 消化器・代謝内科)
共同演者 小林 知樹(広島大学病院 消化器・代謝内科), 河岡 友和(広島大学病院 消化器・代謝内科), 福原 崇之(広島大学病院 消化器・代謝内科), 征木 慶一(広島大学病院 消化器・代謝内科), 苗代 典昭(広島大学病院 消化器・代謝内科), 中原 隆志(広島大学病院 消化器・代謝内科), 宮木 大輔(広島大学病院 消化器・代謝内科), 長沖 祐子(広島大学病院 消化器・代謝内科), 高木 慎太郎(広島大学病院 消化器・代謝内科), 平松 憲(広島大学病院 消化器・代謝内科), 柘植 雅貴(広島大学病院 消化器・代謝内科), 今村 道雄(広島大学病院 消化器・代謝内科), 兵庫 秀幸(広島大学病院 消化器・代謝内科), 川上 由育(広島大学病院 消化器・代謝内科), 相方 浩(広島大学病院 消化器・代謝内科), 高橋 祥一(広島大学病院 消化器・代謝内科), 石川 雅基(広島大学病院 放射線診断科), 柿沢 秀明(広島大学病院 放射線診断科), 茶山 一彰(広島大学病院 消化器・代謝内科)
抄録 【はじめに】シスプラチン(CDDP)の全身投与による低Na血症は添付文書上1-10%の頻度で起こり得るとされているが肝動注化学塞栓術(TACE)時の報告例はない.原因として,SIADHやRenal Salt-Wasting Syndromeなどが報告されており,両者は水分負荷・Na補充の点から治療方針が異なるために臨床所見の相違などで鑑別する必要がある.【症例】80歳代女性.約24年前にHCV抗体陽性,肝機能障害を指摘されたが本人の希望にてIFN治療は行わず肝庇護療法を施行していた.2011年2月肝S5に11mm,S8に8mmの肝細胞癌(HCC)を認めた.HCC stage IIに対してTACE(エピルビシン30mg)を施行した.同年4月S8病変の再発増大ありTACE(ミリプラチン70mg)を施行した.2012年4月S8病変の再発ありTACE(ミリプラチン40mg)を施行した.その後のCTでHCC再発と下大静脈背・側にリンパ節転移を認め,加療目的に入院となった.7月4日TACE(CDDP35mg)施行.翌日に不穏見当識障害を認め,血液検査では入院時のNa 136mEq/lから116mEq/lまで低下していた.希釈性の低Na血症を疑ったが尿中Na濃度の上昇,血漿浸透圧低値,尿浸透圧高値であったことからNa排泄過剰が考えられた.利尿薬中止後もNa排泄過剰の持続あり腎障害はなく,副腎・下垂体機能は正常範囲内であること,過去の他剤使用時には低Na血症は来さなかったことよりCDDPによるSIADHが疑われた.一方,Renal Salt-Wasting Syndromeは脱水を認めず,発症時期が早期であったため否定的であった.細胞外液・生理食塩液投与によって6日目には経口摂取可能となり9日目にはNa 130mEq/lまで回復し,現在は正常値を維持している.【考察】CDDP全身投与時には 近位尿細管障害による再吸収阻害や腎障害軽減目的で行われるHydrationの影響により水・電解質異常を生じやすいとされているがTACE時の報告例はない.今回CDDPを用いたTACE後に低Na血症を呈した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 TACE, シスプラチン