セッション情報 一般演題

タイトル

横行結腸壁内血腫による腸閉塞で発症し,多発する動脈瘤破裂から急な転帰を辿った血管型Ehlers-Danlos症候群の一剖検例

演者 村脇 義之(松江市立病院 消化器内科)
共同演者 杉原 誉明(松江市立病院 消化器内科), 谷村 隆志(松江市立病院 消化器内科), 三浦  将彦(松江市立病院 消化器内科), 田中 新亮(松江市立病院 消化器内科), 河野 通盛(松江市立病院 消化器内科), 吉村 禎二(松江市立病院 消化器内科), 山田 稔(松江市立病院 総合診療科), 岡 伸一(松江市立病院 消化器外科), 吉田 学(松江市立病院 臨床検査科)
抄録 血管型Ehlers-Danlos症候群は血管や消化管の結合織が脆弱となり,動脈破裂や解離など致命的な症状を生じる遺伝性疾患である.今回たび重なる動脈性出血により急な転帰を辿った一例を経験したので報告する.【症例】16歳,男性.【主訴】上腹部痛.【既往歴】10歳,頭皮下血腫.【家族歴】母,胃癌で死去.父,詳細不明.【生活歴】外傷の既往なし.【現病歴】2009年10月に急な上腹部痛が出現し,当院救急外来を受診した.投薬で一時軽快したが,4日後に上腹部痛が再燃し当科を受診し,CT検査で横行結腸に横径10×6cm大の楕円状の巨大な血腫を認め入院となる. 【理学所見】身長172cm,体重 50kg,体温 37.0℃.鼻は細く,小さい顎の顔貌.指関節に過可動を認めた.腹部では上腹部に腫瘤を触知し,腹膜刺激症状を伴っていた.【経過】保存的加療で血腫は縮小せず,消化管むしろ通過障害の増悪を来し,回盲部は著明に拡張した.改善が見込めないと判断し入院11病日に右半結腸切除術を施行した.切除標本では,横行結腸筋層内に器質化を伴う血腫が形成され,管腔はその血腫で閉塞していた.術後経過は良好であったが,術後6日目に血圧低下を伴う胸背部痛を発症し,肝実質を圧排する肝皮膜下血腫が出現した.右肝動脈瘤の破綻が原因であり塞栓術を行った.ところが翌日には左肝動脈の動脈瘤が破裂し,さらに術後30日目に血圧低下を伴う大量の血尿を認め,左腎動脈瘤破裂出血に対しても塞栓術を必要とした.その造影の都度,新たな動脈瘤の出現が確認される病態であった.頻回の重篤な出血に対し塞栓術,大量輸血など集学的治療を行ったが,完全に止血し得ることなく多臓器不全に陥り術後38日目に死亡退院となる.病理解剖にて肺動脈の動脈解離や大動脈の中膜弾性繊維走行不整などの血管壁構造の異常があることも判明した.生化学的,分子遺伝学的検査は家族の同意が得られず,確定診断には至らないが,臨床経過と病理解剖所見からEhlers-Danlos症候群と診断した.
索引用語 Ehlers-Danlos症候群, 結腸壁内血腫