セッション情報 パネルディスカッション19(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器臓器移植後の免疫抑制療法の新展開

タイトル 消PD19-5:

生体肝移植後腎機能障害に対する対策:ミコフェノール酸モフェチル単剤療法の有用性

演者 吉住 朋晴(九州大・消化器総合外科)
共同演者 調 憲(九州大・消化器総合外科), 前原 喜彦(九州大・消化器総合外科)
抄録 【はじめに】カルシニューリン阻害剤(CNI)長期投与による腎毒性は未解決で、肝移植後長期生存例のQOLを左右する重要な課題である。我々は、腎機能障害を来した症例に対し、ミコフェノール酸モフェチル単剤療法(MMF mono)を行っている。【目的】MMF monoの腎機能障害に対する有用性と副作用の有無について検証した。【対象】成人間生体肝移植355例中、維持免疫抑制としてMMF monoを行っている29例。【方法】MMF monoの適応は、移植後6ヶ月以上経過、肝機能ほぼ正常、CNI減量でも血清Cr値が悪化する症例。MMFは25mg/kg/dayで投与。1)背景因子を検討した。2)腎機能、肝胆道系酵素を比較した。3)16例にImmuKnowを施行し、免疫能を評価した。【結果】1)男女比20:9、原疾患はLC-C 17例、LC-B 6例、LC 2例、アルコール性肝硬変2例、劇症肝炎(HBV)2例。術前平均Cr 1.02mg/dl、平均推算糸球体濾過量(eGFR, ml/min/1.73m2) 68.6。糖尿病合併5例。グラフトは拡大左葉+尾状葉16例、右葉13例。CNIはタクロリムス12例、シクロスポリン17例。5例に急性拒絶反応の既往あり。移植後MMF mono開始まで平均59ヶ月、開始時の平均年齢61歳、開始後の平均観察期間17ヶ月。2)MMF mono開始時の平均Cr値(mg/dl) 1.60、平均eGFR 37.4、γGTP(U/L) 77。MMF mono開始1/3/6/12ヶ月後の平均eGFRは42.0/42.3/42.5/45.2と開始時に比し、有意に良好であった(p<0.05)。2例はMMF mono開始後血液透析に導入した。経過中、急性拒絶反応(ACR)発症、ACR疑い各1例でCNIを再開。プロトコール肝生検施行10例では、急性拒絶反応なし。移植後平均生存年数は6年で、29例全例が生存中。3)ImmuKnowはMMF mono開始後平均11ヶ月で平均測定値347ng/ml、健常人比90.7%と免疫抑制状態は維持されていると考えられた。【まとめ】急性及び慢性拒絶反応の発症に関しては更なる経過観察が必要であるが、腎機能改善・悪化予防に対して本療法は有用と考えられた。
索引用語 生体肝移植, 腎機能障害