セッション情報 パネルディスカッション20(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

大腸EMR / ESDの現状と適応

タイトル 内PD20-1:

EMRとESDの選択と治療結果:大腸癌研究会プロジェクト研究報告

演者 中島 健(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科)
共同演者 田中 信治(広島大・内視鏡診療科), 斎藤 豊(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科)
抄録 背景と目的:大腸腫瘍性病変に対するスネアを用いた従来の内視鏡治療CER(EMRおよびポリペクトミー)は広く普及している。日本で開発されたESDは腫瘍径の大きな病変の切除を可能としたが、手技は複雑で合併症も高く治療戦略も施設により異なる傾向にある。またCERとESD比較の多施設前向き研究の報告はない。方法:大腸癌研究会プロジェクト研究「内視鏡摘除手技の標準化(広島大学田中信治委員長)」のもと20mm以上の腫瘍径に対するEMRとESDに対する前向き登録を行った。結果:18施設において、2009年4月から2010年12月まで1845の大腸腫瘍性病変に対して内視鏡治療が行われた(CER:1029例、ESD:816例)。肉眼径は隆起型、混在型、平坦型、陥凹型、再発病変がそれぞれ543、517、777、3、5病変であった。ESDとCERの一括切除率はそれぞれ94.5%/56.9% (P<0.01)であり、治療時間中央値は96±69 分/18± 23分(P <0.01)であった。腫瘍径40mm以上の病変に関しては、76% (n=339/445)にESDが選択されていたが、CERによる一括切除率は12.3%と低かった。ESD群では93%以上と高い一括切除率が得られたが、40mm以上の病変に対するESD治療時間中央値は129±83分と長時間であった。CER群とESD群の穿孔率/後出血率はそれぞれ、0.8%/1.6%(P<0.05)と2.0%/2.2%(P= 0.30)であった。結果的にESD群2例と、CER群1例が緊急手術を要し、内訳は、1例は術中出血で穿孔が2例であった。CER群41例(4.4%)とESD群62例(7.6%)でSM深部浸潤を認め、結果的に、CER群40例(3.9%)とESD群(7.6%)が追加外科切除を施行した。現在1年後の遺残再発率について追跡中である。結語:ESDの一括切除率はCERと比較して有意に高いが、合併症の頻度はともに低かった。腫瘍径40mm以上の病変の一括切除にはESDが必要となるが、治療時間が長くなる傾向にあった。
索引用語 ESD, 大腸