抄録 |
【はじめに】脳血管障害後遺症などの嚥下困難に対して近年、経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下PEG)が普及してきている。しかし、その普及に伴い様々な問題も生じ始めている。当院で1997年から2000年7月までに経験したPEGは62例であった。その内PEG施行直後の自己抜去1例、固定部離開1例を経験した。いずれも腹腔鏡下に修復し得たのでその経過も踏まえ報告する。【症例1】76歳、女性。1999年5月に右脳梗塞を発症し、左半身完全片麻痺、嚥下困難を生じていた。1999年6月29日当院に入院しPEGを施行した。術翌日に退院したが、術後2日目にカテーテルを自己抜去したため同日当院に緊急入院した。腹部CTでfree airを認めたため、腹腔鏡下試験開腹術、腹腔内洗浄、胃瘻造設術を施行した。腹腔内を観察したところ、胃穿孔部は胃体中部小湾側よりに認めた。腹腔内の汚染はわずかであった。次に胃内に内視鏡を挿入し穿孔部よりスネアーを腹腔内に通過させた。通常のPEGの操作と同様に腹壁から穿刺、外套を留置しそこよりガイドワイヤーを挿入、スネアーで把持し、スネアーを内視鏡ごと口側に引き抜き、PEGカテーテルと結んだ後、腹壁側よりガイドワイヤーを牽引していき、PEGカテーテルを腹壁側に誘導し、カテーテルを腹壁に固定した。腹腔内を十分に洗浄した後、ドレーンを留置し手術を終了した。【症例2】85歳女性。1999年7月に左脳梗塞を発症し、右半身不全片麻痺、全失語、嚥下困難を生じていた。2000年4月25日に当院に入院しPEGを施行した。術翌日に近医に再入院したが数時間後より苦痛顔貌を呈し腹部膨満が出現した。腹部X線でfree airの出現を認めたため、術後2日目に当院に再入院となった。腹部CTでもfree airを認めたが、カテーテルは胃内に留置されたままであるのを認めた。腹部を診察したところカテーテルの固定が緩んでいるのを認めたため、胃壁のカテーテル刺入部からairが腹腔内に漏れたものと考え同日腹腔鏡下試験開腹術を施行した。腹腔内観察したところ、腹腔内に汚染は無く、他の腸管に穿孔部も認めず、カテーテルの脱落も認めなかったのでそのまま再固定をし、腹腔内を洗浄した後手術を終了した。【結語】PEG施行直後の自己抜去や、カテーテルの脱落が生じた場合は開腹術の対象となるが、腹腔鏡下試験開腹術は低侵襲であると同時に、安全、かつ確実なカテーテルの再留置が可能であり有用であった。 |