セッション情報 一般演題

タイトル

約12年間に及ぶ画像変化を捉えられた肝嚢胞腺癌の1例

演者 秋吉 高志(九州大学 臨床・腫瘍外科)
共同演者 山口 幸二, 岸仲 正則, 千々岩 一男, 田中 雅夫
抄録 【はじめに】肝嚢胞腺癌は肝嚢胞腺腫よりの癌化が言われているが、初期より長期に及ぶ画像の変化を捉えた報告は少ない。今回我々は約12年間に及ぶ画像経過を捉えた肝嚢胞腺癌の1例を経験したので報告する。【症例】64歳、女性。平成元年に他院のCTでS7に4×3cm(最大割面)、S8に1×1cmの肝嚢胞を指摘され、定期的に経過観察されていた。平成10年7月MRIでS8の嚢胞は4×4cmに増大し、分葉状を呈していたが、充実性部分は存在しなかった。S7の嚢胞はH10年の穿刺吸引細胞診の影響か1×1cmに縮小していた。以後平成11年4月のMRI、平成11年8月、12月のCTでは特に大きな変化を認めなかった。平成12年2月、MRIでS8の嚢胞の大きさには変化なかったが、内部に初めて充実性部分(0.5×0.5cm)を認めた。2ヶ月後のMRIで充実性部分は増大傾向(1.5×2.0cm)を示したため手術目的で5月当科紹介となった。53歳時にC型肝炎を指摘されている。入院時現症、検査成績では特に異常を認めず、肝機能も正常であった。腫瘍マーカーはCEA、CA19-9、AFP、PIVKA-2すべて正常範囲内であった。術前US上は肝S8の腫瘤は4×4cmの充実性病変として描出された。S7の嚢胞性病変も壁が厚く描出され、悪性の可能性も考えられた。CT、MRIではS8の腫瘤は嚢胞性として描出され、壁から乳頭状に発育する充実性部分(1.7×2.0cm)を伴っていた。S7の腫瘤はCTでは内部に充実性部分が疑われたが、MRIでは明らかではなかった。血管造影では主腫瘤は動脈相ではMHA、A8cを栄養血管として辺縁部が強く濃染され、門脈相では陰影欠損として描出された。ERCPでは前区域枝の偏位、狭窄を分岐部付近まで認めた。以上より肝嚢胞腺癌と診断し、右門脈の経皮経肝門脈塞栓施行1ヶ月後に肝拡大右葉切除、右尾状葉切除及び肝管空腸吻合術を施行した。切除標本では腫瘍は径4×4cmで線維性被膜を有し、内部は充実性で出血、壊死を伴っていた。病理組織学的に肝嚢胞腺癌と診断され、被膜への浸潤及びリンパ管侵襲を認めた。卵巣類似間質は認めなかった。また、組織学的リンパ節転移はなかった。術後57日目退院し、術後3ヶ月現在外来通院中である。【まとめ】約12年間に及ぶ初期よりの画像変化を捉えられた肝嚢胞腺癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 肝嚢胞腺癌, 画像変化