セッション情報 シンポジウム2(消化器病学会・肝臓学会合同)

C型肝炎治療の最前線

タイトル 肝S2-10:

難治性C型慢性肝炎におけるIFN応答性に関与する要因とテラプレビル3剤併用療法の効果

演者 中川 美奈(東京医歯大・消化器内科)
共同演者 坂本 直哉(北海道大大学院・消化器内科学), 朝比奈 靖浩(東京医歯大・消化器内科DELIMITER東京医歯大大学院・分子肝炎制御学)
抄録 【目的】テラプレビル(TPV)3剤併用療法においてもIFN応答性が治療効果に影響する。そこでPEG-IFN/RBVの応答性に寄与する要因を解明し、TPV 3剤併用療法の治療効果に関わる臨床的意義を検討した。
【方法】当院および関連施設でPEG-IFN/RBV併用療法を施行したC型慢性肝炎605例を対象とし治療応答性に関与する要因を解析し、血清IL-6の経時的変化と治療効果の関連を検討した。また、TPV3剤併用療法を施行した10例(M/F=7/3)を対象とし宿主遺伝子多型やウイルス遺伝子変異および血清IL-6の経時的変化と治療効果の関連を検討した。さらにレプリコンシステムを用いてIFNシグナル伝達系におけるIL-6の関与を解析した。
【結果】PEG-IFN/RBVの治療中ウイルス消失に寄与する因子は多変量解析にてF因子、前ウイルス量、IL28B、ISDR変異数で、NRに寄与する因子はIL28B、コア変異だった。C型慢性肝炎における治療前血清IL-6は健常人(n=10)に比し有意に高く(p<0.0001)、IL-6値3.0pg/mlをカットオフとして治療効果を群別比較すると、男性ではIL-6高値群で有意にSVRは低下し(52% vs.79%、p=0.012)、治療中も高値のまま推移した。TPV併用療法4例がRVR達成したが、IL28B Minorを含む2例はRVR非達成だった。RVR例のIL-6の経時的変化をみると開始直後速やかに上昇し、ウイルス陰性化とともに低下するのに対して、非RVR例では治療前高値のまま推移し、開始直後のIL-6の一過性上昇を認めなかった。レプリコンシステムを用いた検討では、IFN抵抗株でIL-6およびIFN抑制系分子のSOCS3の増強とISG低下を認め、抗IL-6抗体によりSOCS3低下とIFN応答性の回復が得られた。
【考察】IFN応答性には難治要因とされるHCVコア変異やIL28B SNPとともに宿主IL-6の経時的変化が関連する。TPV3剤併用療法でもIL-6シグナル経路のHCV排除への関与が考えられ、IFN不応例においてIL-6を標的とした治療法の可能性が示唆された。
索引用語 テラプレビル, IL-6