セッション情報 パネルディスカッション20(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

大腸EMR / ESDの現状と適応

タイトル 内PD20-5:

ESDおよびEMRの治療成績からみた大腸腫瘍に対する治療法の使い分け

演者 吉田 直久(京都府立医大大学院・消化器内科学)
共同演者 八木 信明(京都府立医大大学院・消化器内科学), 内藤 裕二(京都府立医大大学院・消化器内科学)
抄録 [目的]本邦では平成24年4月に大腸ESDは保険収載となり今後その普及が期待される.今回我々は当院における大腸ESD /EMRの治療成績について検討を行ったので報告する.[方法]対象は,2006年から2012年に,当院および関連施設で行った大腸ESD412症例および過去2年間で検討可能であった長径15mmの大腸腫瘍に対するEMR64症例とした.ESD適応は,原則的に長径20mm以上の粘膜内病変および粘膜下層軽度浸潤癌(SMs)としたが,長径20-29mmで拡大観察などで腺腫と診断しえたものはEMRによる分割切除とした.長径20mm未満の病変は原則EMRとしたが長径10-19mmのLST-NG偽陥凹病変およびEMR後再発病変はESDとした.検討項目はESDおよびEMR各群の治療成績とした.[成績]ESDは平均腫瘍径30.9mmであり,370例(90%)が一括切除,32例(8%)が分割切除,10例(2%)が高度線維化のため切除不能にて中止となった.切除しえた402例の平均施行時間は99.4分であり,病理組織はlow grade adenoma112例(28%),high grade adenoma78例(19%),M-SMs癌185例(46%),SMmassive(SMm)癌27例(7%)であった.なお中止例のうち追加切除を施行した9例の病理組織は腺腫・M・SMs癌4例,SMm癌3例,MP癌2例であった.偶発症は後出血が2.6%,穿孔が4.6%であった.EMRは平均腫瘍径17.9mmであり,49例(77%)が一括切除,15例(23%)が分割切除であった.平均施行時間は4.5分であり病理組織はadenoma41例(64%),M-SMs癌20例(31%),SMm癌3例(5%)であった.偶発症は後出血が1.5%,穿孔が1.5%であった.大腸ESDによって切除されたlow grade adenomaで30mm未満のものは64病変あり,うちLST-NG偽陥凹型およびEMR後再発病変の3病変を除いた61病変はEMRによる治療の可能性も考えられESD全体の15%に及んだ.[結論] 大腸ESDは高い一括切除率および安全性の高い手技であったが半数程度は腺腫に施行されていた.EMRは短時間で施行可能であり,今後腺腫病変のさらなる診断能向上などによる治療法の使い分けが望まれる.
索引用語 ESD, EMR