セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
(消)びまん型胆管細胞癌と原発性硬化性胆管炎(PSC)との鑑別困難例
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演者 |
森園 周祐(福岡市民病院 内科) |
共同演者 |
有村 英一郎, 多田 靖哉, 下橋 直也, 田邉 雄一 |
抄録 |
症例は64歳女性。1998年3月初旬より右季肋部痛、背部痛が出現。3月19日に近医受診。胆道系酵素の上昇を認め、US上右肝内胆管の拡張を認め胆管癌疑いにて、精査加療目的で3月27日当科入院となった。検血、凝固系に異常所見認めなかった。生化学的検索では黄疸を認めず、GOT 55 IU/L,GPT 61 IU/Lと軽度上昇、ALP 1859 IU/L、γ-GTP 366 IU/Lと胆道系酵素優位の上昇を認めた。腫瘍マーカーはCEA,CA19-9等異常認めなかった。 腹部エコーでは左肝管内に実質像を認め、三管合流部まで連続しており、又胆管壁の不整、肥厚像を認めた。右肝管は拡張していた。CTでは、両葉の肝内胆管拡張を認め、左肝管から三管合流部にかけて壁の肥厚を認めた。MRCPでは、総肝管から三管合流部に欠損像を認めた。ERCでは、肝門部胆管の狭窄、硬化像、数珠状変化を認めた。胆汁の細胞診ではNC比の高い異型細胞を認め、強いPAS染色陽性を認めたため、クラスVと診断した。以上より、肝両葉に及ぶびまん型肝門部胆管癌と診断した。外科的切除術の適応無しと判断し外来経過観察の方針としたが、PSCの可能性も否定できず5月8日よりウルソデオキシコール酸(UDCA)300mg/日投与開始。さらに20日後より600mg/日に増量した。抗癌剤投与は行わなかった。UDCA内服開始以降胆道系酵素の著明な低下を認め、5ヶ月後にはほぼ正常範囲まで改善した。診断後9ヶ月のエコーでは、右肝内胆管に拡張を認める以外、特記所見認めなくなっていた。1年後のCTでは右葉の肝内胆管の拡張は消失していた。1年後に施行した肝生検組織標本では門脈域の軽度の線維化を認めるのみで、小葉間胆管に異常所見は認めなかった。以上より、当初びまん型肝門部胆管癌と診断していたものの、経過より癌は考えにくく、原発性硬化性胆管炎(PSC)と診断した。 PSCの診断は肝内および肝外の胆管の拡張と狭窄像より診断されることが多い。しかし、PSCと類似した病態、画像所見を呈するびまん型胆管細胞癌との鑑別は容易ではない。画像所見では憩室様変化はPSCに特徴的であるとされ、細胞診も有効でPSCのブラッシング診断能は特異性89%と報告されている。しかし細胞診では、PSCにおける炎症による胆管上皮細胞の変性のため疑陽性となる可能性もあり、又、本症例は進行の遅い胆管癌の可能性や今後胆管癌を合併する可能性も否定できず厳重な経過観察が必要と考えられた。今回我々はPSCと胆管癌の鑑別に苦慮する症例を経験した。若干の文献的考察を加え報告する。 |
索引用語 |
びまん型肝内胆管癌, PSC |