セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
(消)血清膵酵素の上昇を認めなかった原因不明の急性膵炎の一例
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演者 |
澄井 俊彦(国立病院九州がんセンター 消化器内科) |
共同演者 |
阿部 恵子, 大内 二郎, 宮城 譲, 内村 浩太郎, 横田 昌樹, 井口 東郎, 船越 顕博 |
抄録 |
【緒言】急性膵炎の臨床診断基準は、上腹部の腹痛発作、膵酵素の上昇、画像での異常所見の3項目中少なくとも2項目以上がある場合とされている。今回、我々は膵酵素上昇を認めず、腹痛と画像所見から急性膵炎と診断した一例を経験したので報告する。【症例】28才、女性、看護婦。家族歴に膵疾患なし。生活歴も特記事項なし。既往歴では腹部外傷なく、他にも特記事項なし。主訴は上腹部痛。現病歴は平成12年6月23日の夕食が過食傾向であった(飲酒はビールをジョッキ1/2杯)。6月24日の朝から上腹部痛出現し、20時30分に当科受診。上腹部(中央~左側)圧痛、左背部叩打痛を認め、背を丸めると腹痛が軽減。腹部エコーでは胆石を認めず。膵頭部、体部は観察範囲では異常なし。膵尾部は描出できず。鎮痙剤投与にても腹痛は改善せず、6月25日午前1時に当科緊急入院となる。入院時現症は170cm, 68.0kg 。意識清明。 結膜に貧血なし、黄疸なし。心音・呼吸音は異常なし。 腹部は平坦・軟で上腹部圧痛あり。P点陰性、G点陰性、高山の圧診法陽性、腫瘤は触知せず。肝・脾・腎は触知せず。血管雑音聴取せず。左背部叩打痛を認めた。【入院時検査成績】検尿、検便は異常なし。末梢血検査で白血球数 7000/μl(分類異常なし、好酸球増加なし)。血液生化学検査では肝胆道系酵素異常なし。中性脂肪 65mg/dl、血糖 90mg/dl、 Cr 0.5mg/dl 、Ca 8.8 mg/dl 。免疫学的検査ではCRP 0.33 mg/dlとごく軽度の炎症所見あり。血清補体価や免疫グロブリン値は正常範囲。血清膵酵素は P-amylase、 Elastase 1 、Trypsin 、Lipase 、PLA2全て正常範囲。Cationic trypsinogen, PSTIの遺伝子解析も異常を認めず。腹部CT検査では膵体尾部の腫大と一部に嚢胞様に低吸収域と膵体尾部の背側に液体貯留を認めた。【臨床経過】理学的所見から急性膵炎と診断し、入院直後から、直ちに蛋白分解酵素阻害剤の持続点滴を開始した。自発的腹痛が軽減し、CTで膵体尾部の腫大が軽快したことを確認した後に施行したERPでは、膵管像は正常で膵胆管合流異常の所見も認めなかった。ERP後には、一過性に血清膵酵素の上昇は認めた。経口摂取開始後も、腹痛の増強は認めなかったが、上腹部の異和感が持続した。【結語】膵酵素上昇を認めなかったが、腹痛発作と画像所見から診断した原因不明の急性膵炎を報告した。 |
索引用語 |
急性膵炎, 膵酵素 |