セッション情報 パネルディスカッション20(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

大腸EMR / ESDの現状と適応

タイトル 内PD20-6:

治療成績から見た大腸腫瘍に対する適切な内視鏡治療手技の選択

演者 寺崎 元美(広島大・内視鏡診療科)
共同演者 田中 信治(広島大・内視鏡診療科), 茶山 一彰(広島大病院・消化器・代謝内科)
抄録 2012年4月から保険収載予定の大腸ESDの適応は最大径2cmから5cmの早期癌又は腺腫である。今回,その保険適応の妥当性について検討した。【対象と方法】<1>2011年12月までに施行した大腸ESD 400例の完全一括切除率および穿孔率について,全期間と最近2年以内に施行した症例 (161例)を比較する。<2> 2006年4月から2010年12月までに当科にて内視鏡的摘除した径20mm以上の大腸LST 344病変(ESD 95病変,Hybrid ESD<スネア併用ESD>36病変,一括EMR 85病変,分割EMR 128病変)を対象に,局所再発率について解析し再発病変の特徴を検討した。なお,治療手技の選択は大腸ESD標準化検討部会の適応基準に従った。【結果】<1>全期間の完全一括切除率は90% (361/400), 穿孔率は5% (19/400)で,最近2年間は完全一括切除率96% (154/161), 穿孔率 3% (5/161)であった。また,径50mm以上の高度線維化を伴う病変(F2)に限った場合は,全期間の完全一括切除率78% (25/32),穿孔率6.3% (2/32),最近2年は完全一括切除率86% (19/22),穿孔率4.5% (1/22) であった。<2>治療法別局所再発率は, ESD 0% (0/95),Hybrid ESD 0% (0/36),一括EMR 2.4% (2/85),分割EMR 12.5% (16/128)であり分割EMRで有意に高かった。腫瘍径別の一括EMR・分割EMR後の局所再発率は,径20-50mm 4.8% (9/188),径50mm以上 36% (9/25)と径50mm以上で有意に高かった。分割数別では,4分割以下4.3% (7/164),5分割以上22.4% (11/49)と5分割以上で有意に高率であった。しかし,局所再発病変は全て腺腫で,追加内視鏡治療で根治可能であった。【結語】ESDおよびHybrid ESDによる完全一括切除例では再発は認めなかった。線維化の高度な径50mm以上の病変も近年その治療成績は向上した。一方,径20-50mmの病変の分割EMRでは局所再発率4.8%であったが,再発病変は全て腺腫で追加内視鏡治療で根治可能であった。以上,部会の適応に準じた治療法の選択は妥当であり,径20-50mmの腺腫に対してはEMRで十分根治可能なためESDは不要である。
索引用語 ESD, EMR