セッション情報 パネルディスカッション20(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

大腸EMR / ESDの現状と適応

タイトル 内PD20-9:

腫瘍径20mm以上を有する大腸腫瘍における治療方針の検討

演者 大谷 友彦(東京慈恵会医大・内視鏡科)
共同演者 田尻 久雄(東京慈恵会医大・内視鏡科DELIMITER東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科), 池上 雅博(東京慈恵会医大・病院病理部)
抄録 【目的】大腸癌治療ガイドラインでは腫瘍径20mm以上を有する大腸腫瘍は外科切除の適応と推奨されている.しかしながら当院では術前に粘膜内もしくは軽度SM浸潤に限局すると診断された病変に限り、積極的に内視鏡治療を選択している.今回、粘膜切除術(EMR、EPMR)と粘膜下層切開剥離術(ESD)におけるすみ分けについて検討を行った.【方法】当院でESDを導入して以降、2007~2011年の過去5年間に切除された188病変を対象とした.いずれも20mm以上の側方型発育腫瘍(LST)で術前に拡大内視鏡で精査の後、固定後に実体顕微鏡下で切り出しを行い、組織所見と対応可能な病変のみを選出した.【成績】EMR・EPMRを施行したA群(74病変)とESDを施行したB群(114病変)で比較検討を行った.LSTを顆粒型(LST-G)と非顆粒型(LST-NG)に大別し、腫瘍平均径を比較した.A群ではLST-Gで31.0mm、LST-NGで28.5mm.B群ではLST-Gで48.9mm、LST-NGで35.2mmであった.一括切除率ではA群がLST-Gで41.6%(20/48)、LST-NGで53.8%(14/26)であった.B群ではLST-GとLST-NGともに一括・完全切除された.またA群における一括切除と分割切除での腫瘍平均径の比較はLST-Gで24.0mmと36.0mm、LST-NGで24.3mmと33.5mmであった.遺残再発率ではA群で18.2%(EMR; 15.4%, EPMR; 20.7%)、B群で0%であった.またSM浸潤率ではA群で6.8%(5/74)、B群で14.0%(16/114)であった.【結論】ESDが平成24年度より保険収載されたことで、今後、多用されるものと予想される.しかしながら臨床の場で20mm以上を有する表面型腫瘍にあたる機会は少なく、EMRで対応可能と考えられる.本検討より腫瘍径が25mm以下である場合は一括切除が可能な場合が多く、EMR(EPMR)を選択すべきである.また30mm以上を超える場合は分割切除になる可能性が高いと予想される.以上から腫瘍径の大きい軽度SM浸潤が強く疑われる病変では一括切除を行い、十分に病理組織所見を確認するためにESDを選択する必要がある.
索引用語 大腸ESD, 大腸EMR